さて、まずは本作のストーリーを、取扱説明書から抜粋してみよう。舞台となるのは中世ヨーロッパにある平和な小国トランシルバニア。彼の地では「魔王ドラキュラは百年に一度、キリストの力が弱まるころ、邪悪な心を持つ人間の祈りによって復活する。そして、その復活のたびに、彼の魔力は強くなる」という伝説が語り継がれており、実際に過去に一度、ドラキュラはこの世に復活した。だが、英雄クリストファー・ベルモンドによって倒されている。
その死闘からちょうど百年が経過しようかというイースターの夜、邪教徒の手によって魔王ドラキュラが再びこの世に舞い戻った。一報を受けたベルモンド一族の血を受け継ぐ青年シモンは、父譲りの不思議な力を秘めたムチを手に、単身ドラキュラ城へ乗り込むのであった。「ドラキュラVSベルモンド家」というシリーズおなじみの構図、「武器はムチ」という基本システムは、第1作から受け継がれた伝統である。ただし、これに属さないシリーズ作品も存在することを付け加えておきたい。
ゲーム内容はオーソドックスなステージクリア型。全体で6ブロック、各ブロックはそれぞれ3つのステージで構成されているので、全18のステージ構成となる。前述の通りシモンの武器はムチ。このムチは、アイテムのクサリを取ることで攻撃力がアップし、さらにこの状態でもう一度クサリを取ると飛距離が伸びて使い勝手が増す。
また、ムチとは別にサブウェポンが5種類用意されており、パワーアップこそできないものの、それぞれ性能が異なるのが面白い。常に1種類しか携帯できないため、どのサブウェポンを持ち歩くのか悩みどころだが、ステージに応じて適宜変えるのがベストだろう。とはいえ、使い勝手の良し悪しはプレイヤーによって様々。常に同じサブウェポンを持ち歩くという選択肢ももちろんアリだ。なお、サブウェポンを使用する際には一定数のハートを消費する仕様。ハートは、敵を倒したりロウソクや壁を破壊することで出現することがある。
各ブロックの最後にはボスが待ち構えており、シモンの行く手を阻む。中でも反則的な強さを誇るドラキュラの副官・死神は、以降のシリーズにもたびたび登場し、その都度プレイヤーを奈落の底に突き落とすことに。
本作の難易度の高さはつとに有名だが、それはボス戦の難しさだけに依るものではない。道中も決して無傷では済まされず、ライフ制ではあるものの、穴や川に落ちたら即アウトというシビアな内容だ。鋭い刺の付いた吊り天井等も即死に繋がるギミック。こちらも駆け抜けるタイミングがなかなか難しい。一方、敵や敵が放った火の玉や骨に触れた程度で一撃死することはないが、触れた瞬間にはシモンが吹き飛ばされてしまうため、これが原因で画面外へフェードアウト、それを眺めながらため息…というシーンも日常茶飯事。本作において、転落死はもはや風物詩の感すらある。また、即死を回避するためにジャンプを試みたはいいが、予期せぬ所から敵が特攻を仕掛け、触れた反動で無残にも穴に落下してしまうことも珍しくない。敵の配置が意地悪なくらい絶妙であり、さらにジャンプ中に軌道修正ができない点も、本作の難易度を押し上げる要因の一つと言えるだろう。
ちなみに1993年に発売されたROMカートリッジ版には、ダメージの際の吹き飛びがないEASYモードが搭載されていたが、当時ファミコンはすでに第一線から退いていたこともあり、このROM版はあまり数が出回らなかった。そのため、現在ではプレミアソフト化している。
余談だが、ディスクシステム版も元々はROMカートリッジで開発されていた経緯があり、美しい音色を持つディスクシステム拡張音源には残念ながら非対応だったものの、他メーカーの追随を許さないハイクオリティなサウンドを実現していた。再びディスクシステムで登場した次回作『ドラキュラII 呪いの封印』では拡張音源も使用され、特にフィールド曲の「Bloody Tears」は、のちのシリーズでもたびたびアレンジ使用されるなど、シリーズを代表する曲の一つに数えられる。そして、ROMカートリッジでの発売となったシリーズ第3作『悪魔城伝説』は、コナミ独自の拡張チップ「VRC VI」を搭載したことで、ゲーム内容はもとより、グラフィック・サウンド両面が格段にグレードアップ。シリーズのファンを大いに喜ばせたのである。
(内田@ゲイム脳=隔週月曜日に掲載)
DATA
発売日…1986年
メーカー…コナミ
ハード…ディスクシステム
ジャンル…アクション
(C)KONAMI 1986