プロのスポーツ選手を一瞬にして死に追いやってしまうことのある心筋梗塞とはどんな病気なのだろうか。
心筋梗塞とは心臓を覆う冠動脈が閉塞してしまい、心臓の筋肉に壊死が起きることをいう。突然血管が詰まり30分以上、血流が流れないと細胞が壊れてしまうのだ。冠動脈が閉塞してしまい、冷や汗をかくほどの強い胸の痛みを自覚することが多い。糖尿病を患っていると感覚が鈍くなっており痛みを自覚することなく、知らないうちに血管が詰まっていることもある。
心筋梗塞の原因は一言で言うと動脈硬化だ。誰でも年齢を重ねるごとに動脈硬化が進み、男性では40代頃から、女性では閉経後の50歳頃から動脈硬化に伴う病気が急激に増える。
また、特に動脈硬化になりやすいタイプの人がいる。喫煙習慣、糖尿病、高血圧やコレステロールの異常、家系に心筋梗塞の人がいるなど5つがリスクとして挙げられ、一つ増えるごとに動脈硬化の進みが早くなっていく。動脈硬化を抑え、心筋梗塞を防ぐためにそれぞれ内服薬などでコントロールすることが重要になる。
糖尿病、高血圧やコレステロールの異常などはいわゆる生活習慣病に分類されるがいずれの項目も必ず健康診断でチェックされると思う。そのまま放置している人もよく見かけるが、少しずつ自身の命をむしばんでいることを自覚してほしい。
心筋梗塞の冠動脈が詰まる前段階として、冠動脈が狭い状態のときに胸の痛みを訴える方もおり、狭心症とよばれる。典型的な症状としては、階段を上る、走るなど体に負荷をかけたときの胸の痛みだ。もちろん狭心症の症状のないまま突然、心筋梗塞を発症する人もおり、狭心症の症状が典型的でないこともある。
心筋梗塞を発症した場合、一刻も早く病院を受診し、カテーテル治療を受ければ心臓のダメージを少しでも減らせる。また、心筋梗塞により不整脈を引き起こし死に至ることもあるためおおよそ1週間程度、入院して経過を見ることになる。
タイミング良くカテーテル治療など適切な処置を受けることができれば命に別状なく日常生活に戻れることも多い。しかし、冠動脈が詰まる場所によっては広範囲な心筋梗塞となり、病院にたどり着く前に死に至ることも。心臓の機能が失われ長期的に心不全に悩まされることもある。
平成30年に厚生労働省が公表した「人口動態統計月報年計」によると現在、心疾患は日本人の死因の2位になっている。もし、今まで自覚したことのない胸部の症状が持続する場合、特に、先に挙げた喫煙や生活習慣病など動脈硬化のリスクに心当たりがある人はすみやかに医療機関を受診することを強くおすすめする。
引用:厚生労働省平成30年(2018)人口動態統計月報年計(概数)の概要
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai18/index.html
文責:医師 木村ゆさみ