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夏風邪と勘違いしがち? 夏の体調不良は「気温差ストレス」が原因かも… 医師が教える対処法

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画像はイメージです

 今年は去年に比べて冷夏が続いているが、8月からは猛暑になると言われている。気象庁によると去年の8月の平均気温は28度、最高では37度を記録している。一方で、公共施設では室温が23〜26度に設定され、屋内外の気温差が10度以上になることもある。気温差が激しい環境にいると風邪に似たような症状を感じることもあり、「気温差ストレス」を風邪と勘違いしてしまうことも少なくない。

 風邪の多くは上気道(鼻やのど)にウイルスが感染することで起こる病態である。一方、「気温差ストレス」で鼻水やくしゃみ、だるさなど風邪のような症状が出ているときには、気温差による自律神経の乱れからアレルギーが引き起こされている。大きな違いは「気温差ストレス」では鼻水は水っぽくさらさらで、熱はなく、風邪のように人にうつることもない。風邪は安静にし、水分・栄養補給をすればおおむね2週間程度で改善されていく。こじらせる前に早めに対処することをおすすめする。

 このように、気温差のある屋内外を行き来することで自律神経のバランスを崩してしまうことを「気温差ストレス」といい、頭痛やだるさなどの体調不良を訴える人も多い。実際、「三菱電機ビルテクノサービス」が2017年8月に実施した「夏のオフィス環境に関する意識と実態調査」によると、ビジネスパーソン1000人のうち冷房で体調不良になったことがあると回答した人は7割を超えている。

 気温差ストレスの代表的な症状としては冷え、頭痛、だるさがある。これらに加え、肩こりや頭痛、めまいなどの身体的な不調から、気持ちの落ち込みや不安感などの精神的なものまで起こり得る症状は人それぞれだ。さらに、自律神経がバランスを保とうとエネルギーを過剰に消費すると冷えの症状が現れ、さまざまな症状につながることもある。

 また、骨格にゆがみがある人はいっそう気温差ストレスの影響を受けやすいといわれる。猫背など悪い姿勢を続け、長時間スマートフォンを使い前かがみの姿勢でいると骨格がゆがむ。自律神経が通る背骨にゆがみがあると自律神経の働きが鈍るのだ。

 では、こうした「気温差ストレス」で身体の不調を感じたときはどうすればいいのだろうか。

 冷えを感じる場合、衣類や空調の調整ではなかなか改善されないが、蒸しタオルや温熱シートなどを利用して首を温めるのは手軽にできて有効だ。入浴の際に温めの38〜40℃のお湯に10〜20分程度浸かることでも疲労回復につながる。さらに、炭酸ガス入りの入浴剤を使うと、より血行が良くなり、身体を温める効果が得られ、自律神経の働きも改善させる。血管には、寒暖の差に応じ収縮したり拡張したりする「血管応答性」がある。加齢や生活習慣の乱れでこの働きが低下すると、冷えやむくみの原因になる。炭酸ガス系の入浴剤を使い続けると、血管応答性が向上することが2012年の京都大学と花王の研究で分かっている。

 また、骨格のゆがみを整えるため普段の歩き方や姿勢を見直すことも有効な対処法だ。普段から正しい姿勢を保つように心がけるだけでゆがみの予防につながる。同じ姿勢で仕事をしている人などは休憩時間に簡単なストレッチなど取り入れることで体調の改善が期待できるといえる。

 空調の設定温度は一般的に室内と外気温との差が5〜6度以内であればよいとされており、最近の医学研究でも同様の知見が得られている。

 40度を超える酷暑では、外気温と室内の温度差は7度以内に保つことは難しいが、湿度が低い方が同じ設定温度でも快適に過ごすことができるので、除湿機能もあわせて活用することをおすすめする。

 また、暑いところでは自律神経が反応し、汗をかくことで人間は体温を調節する。上手に汗をかくには暑さに慣れることが必要であり、常に快適な室内で過ごしていると急に外出しても汗をかけずに体温調節機能が働かなくなることがある。入浴などの生活習慣で自律神経を整えるだけでなく適度に汗をかく運動など心がけ、自律神経の働きを保つことも必要だ。

記事内の引用について
気象庁
http://www.jma.go.jp/jma/
夏のオフィス環境に関する意識と実態調査 三菱電機ビルテクノサービス
https://www.meltec.co.jp/press/AC1708.html
「ぽかぽか技術」…入浴剤、血管や肌に作用
https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20151217-OYTEW52714/
人工炭酸浴の自律神経機能に及ぼす影響 大崎紀子ら
https://www.jstage.jst.go.jp/article/onki1962/63/2/63_2_91/_pdf/-char/ja
温熱環境のステップ変化が人体に与える影響に関する基礎的研究 藏澄美仁
http://www.sugiyama-u.ac.jp/univ/assets/docs/21kurazumi-b.pdf

文: 医師 木村ゆさみ

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