ほどなくして、ネットには録音された予定原稿の朗読音源が続々とアップされ、また核戦争を想定したディストピアフィクションのネタや演出要素として繰り返し用いられるようになった。いわば、ネットでバズった挙句に、ミーム化したのである。
そこまでは日本でも同様だったが、日本の場合は英語情報の輸入、翻訳に際して反戦平和反核反原発勢力が「相対的に大きな力を持った」点と(それらの「平和」勢力は、欧米でもこのニュースに強く反応しているが、日本ほど大きな比重を占めてはいなかった)、ミーム化の過程で東日本大震災にともなう原発事故が発生し、少なからぬ影響を及ぼしたことが大きく異なっていた。そして、英語圏では後述するような続報が発信、共有されたのに対し、日本ではほとんど報じられることなく、最初の衝撃的な情報のみが繰り返しネタにされたのである。
そのため、日本ではふたつの奇妙な噂が、ネットで密かに語られ始めた。
ひとつは英国放送協会が作成した予定原稿に「秘密のメッセージが含まれている」というもの。
もうひとつは、日本でも同様の予定原稿が存在し、日本放送協会はそのことを隠しているというものだった。
(続)