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「苦情は受け付けません」 スカイマークが異例のサービス簡略化宣言

 航空会社のスカイマークエアーライン(東京都大田区)が、5月中旬から乗客にサービスの簡略化などへの理解を求める内容の文書を、機内に備え付けた。国内の航空業界の常識とは異なる対応に、「業界の評価を下げかねない」(航空大手幹部)と懸念する声が上がるなど波紋を呼んでいる。

 その文書は「スカイマーク・サービスコンセプト」と称されるもので、「スカイマークでは従来の航空会社とは異なるスタイルで機内のサービスをしております。『より安全に、より安く』旅客輸送をするための新しい航空会社の形態です。つきましては、皆さまに以下の点をご理解いただきますようお願い申し上げます」と定義付けられており、詳細については以下の通り。

(1)お客様のお荷物はお客様の責任において収納をお願いします。客室乗務員は収納の援助をいたしません。

(2)お客様に対しては従来の航空会社の客室乗務員のような丁寧な言葉使いを当社客室乗務員に義務付けておりません。客室乗務員の裁量に任せております。安全管理のために時には厳しい口調で注意をすることもあります。

(3)客室乗務員のメイクやヘアスタイルやネイルアート等に関しては、『自由』にしております。

(4)客室乗務員の服装については会社支給のポロシャツまたはウインドブレイカーの着用だけを義務付けており、それ以外は『自由』にしております。

(5)客室乗務員の私語等について苦情をいただくことがありますが、客室乗務員は保安要員として搭乗勤務に就いており接客は補助的なものと位置付けております。お客様に直接関わりのない苦情についてはお受けいたしかねます。

(6)幼児の泣き声等に関する苦情は一切受け付けません。航空機とは密封された空間でさまざまなお客様が乗っている乗り物であることをご理解の上でご搭乗頂きますようお願いします。

(7)地上係員の説明と異なる内容のことをお願いすることがありますが、そのような場合には客室乗務員の指示に従っていただきます。

(8)機内での苦情は一切受け付けません。ご理解いただけないお客様には定時運航順守のため退出いただきます。ご不満のあるお客様は『スカイマークお客様相談センター』あるいは『消費生活センター』等に連絡されますようにお願いいたします。

 といった内容で、機内の座席ポケットに備え付けている。
 同社は98年に運航を開始。JAL、ANAより比較的安い運賃をセールスポイントに事業を展開。昨今のLCC(格安航空会社)の相次ぐ参入で、価格競争が激化するのは間違いなく、経費削減に伴う苦情増加に先手を打ったとも見てとれる。

 同社は「いろいろな問い合わせを受けたため、当社のコンセプトを改めて明文化した」と説明している。
 ただ、同社は肝心の安全上のトラブルが相次ぎ、監督官庁の国土交通省は、安全管理体制に不備があるとして、5月22日に厳重注意したばかり。業界関係者からは「安全性対策の強化を優先すべき」との批判も聞かれる。
 「より安く運航するには、いちいち客のわがままに構っていられない」という同社のスタンスは分からなくはない。しかし、上記の(2)〜(5)には、違和感を覚える方も多いだろう。
 「丁寧な言葉使いを義務付けていない」、服装自由、私語自由といった内容は、そもそもコストとは無関係。航空会社といっても、しょせんは接客業。感じのいい接客にはコストは1円もかからない。このコンセプトでいえば、金髪、ギャルメイク、派手なネイルアートをした客室乗務員が、客にタメ口をきいてもOK。「フライト終わったら、合コン行こうか?」などといった、客に聞こえるような客室乗務員同士の私語も容認されることになる。それは接客やビジネスの基本とは、かけ離れたものである。

 同社は確かにJAL、ANAより安いが、新興のLCCと比べれば決して安いとはいえない中途半端な立場。客室乗務員があまりにも、非常識な態度や服装などで乗務するようであれば、不満が増えて、敬遠する客も出てくるだろう。そうなれば、会社の経営にも影響しかねないとも思われるのだが…。
(蔵元英二)

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