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【不朽の名作】ゴジラファンの間でも人気の高い「ゴジラVSビオランテ」

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 去年7月に、米国版ゴジラ、『GODZILLA』の公開記念として、CS日本映画専門チャンネル企画による、ゴジラシリーズ全28作品のベスト1を決める「ゴジラ総選挙」の結果発表が行われた。その総選挙で、1954年に公開された初代『ゴジラ』を抑えて、1位を獲得した作品があった。それが今回紹介するシリーズ17作目で1989年公開の『ゴジラVSビオランテ』だ。

 ゴジラシリーズとひとまとめにされるが、年代によって作品の雰囲気は、大きく違ったものとなっている。84年公開の『ゴジラ』から、95年公開の『ゴジラVSデストロイア』までをいわゆる「VSゴジラシリーズ」と呼ぶが、今回紹介する『ゴジラVSビオランテ』はVSシリーズとしては2作品目となる。84年版『ゴジラ』で久しぶりに「人類への脅威」として描かれ直されたゴジラをどう料理するか、公開前からこの作品には大きな期待がかけられていたはずだ。結果としては、より良い方向に向かったと断言して良いだろう。

 54年公開の『ゴジラ(初代ゴジラ)』から始まる「昭和ゴジラ」と呼ばれるシリーズは、後半に行けば行くほど予算の都合で、建物破壊描写の少ない、荒野での怪獣プロレスに終始する作品が増え、さらに当時の「ウルトラマン」ブームにのっかる形で、ゴジラを完全に善玉キャラとした、子供向け傾向の強い作品が増えていった。そして、だんだんと人間ドラマの部分は軽視されがちとなり、これはこれで楽しめるが、少し物足りないという状況が続いていたのだった。初代ゴジラの誕生理由が、当時社会問題となっていたビキニ環礁の核実験に着想を得てということもあり、当初ゴジラシリーズは、極めてメッセージ性の高い作品であった。その影響で、ゴジラを中心とした、シリアスな人間ドラマの部分も作品を彩る重要な要素だったのだが、やがてその魅力は忘れ去られていくこととなり、その流れを払拭したのが84年版『ゴジラ』だった。そして、『ゴジラvsビオランテ』はさらに細かい部分まで手を入れ、シリーズの重厚感をより増すことに貢献した。この作品がゴジラシリーズのなかで、際立って評価が高いのは、ストーリー展開がしっかりしており、“大人も楽しめる”という、後のVSシリーズの方向性を決定づけた作品であるということが大きな理由のひとつとなっている。

 まず、今後のVSシリーズの重要なポイントとなる「ゴジラ細胞」という解釈が完成した。これはそもそも核エネルギーを内部に取り込んでいるゴジラはなぜ被曝しないのか、ミサイルやメーサー砲の攻撃を受けてもなぜビクともしないのかという事に、一応の理由付けをするものとなった。そして、このゴジラ細胞に関係した形で、ビオランテ誕生のエピソードを入れることにより、劇中で緻密な人間ドラマを展開させることにも成功したのだ。

 この作品でのゴジラの対戦相手の怪獣となるビオランテだが、前記したゴジラ細胞と植物のバラに、人間の遺伝子を組み込むことで完成した怪獣となっている。この人間の遺伝子の提供者が、劇中でゴジラ細胞をめぐるテロ行為により命を落とした沢口靖子演じる白神英理加で、組み込んだのは英理加の父親にあたる高橋幸治演じる遺伝子工学の世界的権威、白神源壱郎博士だったという形で、ビオランテの誕生理由が、初代ゴジラの、核の脅威に関するテーマとは違うが、遺伝子工学や、バイオテクノロジーの発達した当時の世相を強く反映した形となっている。この部分を説明するには、やはり人間への描写が不可欠で、結果的にそうなったのかも知れないが、ゴジラの活躍以外にも、面白い要素を提供している。

 もちろん肝心のゴジラの登場シーンもかなり印象深い。この作品、シリーズ中一番といってもいい程にゴジラの登場をもったいぶるのだ。しかも、ただ出さないだけではなく、三原山の火山活動でゴジラ移動の痕跡が確認されたり、超能力訓練中の子供が一斉にゴジラの絵を描き始めたりと、散々ゴジラの影を感じさせつつも、なかなか登場しない。ようやく登場した時には、劇中でゴジラが出てこないと自身の存在意義が無くなってしまうと焦れていた権藤一佐のように、歓喜することだろう。

 その後の自衛隊との対決は、後の作品に登場する、Gフォース開発の大型対ゴジラ兵器を除けば、VSシリーズでの人間対ゴジラの戦闘シーンで一番派手と言ってもいいかもしれない。シリーズおなじみの通常兵器の他に、ゴジラの熱線を反射して攻撃することが出来る「スーパーX2」や「サンダーコントロールシステム」という電撃攻撃をする装置などが活躍する。とはいっても、これらの兵器も峰岸徹演じる権藤一佐に活躍に比べれば霞む。権藤一佐は、ゴジラ細胞を利用して作った、ゴジラ体内の核物質を食べる事でゴジラの活動を停止させる「抗核エネルギーバクテリア」を、生身でゴジラの口に直接撃ちこむのだが、その時の、「薬は注射より飲むのに限るぜ、ゴジラさん!」のセリフは、この作品一番の名セリフと言っていいだろう。

 実はこの作品、ゴジラVSビオランテというタイトルだが、肝心のビオランテとの対決は数分しかない。とはいっても、ビオランテに見せ場がないという訳ではない。この怪獣には誕生直後の「花獣形態」とゴジラの熱線エネルギーを取り込んだ「植獣形態」という2タイプがある。花獣形態は不気味な巨大バラという感じで、植獣形態は、植物の体にキバを生やした巨大なワニのような頭部が特徴だ。このビオランテの植獣形態は、植物のゴジラとも言える造形で、個人的にはシリーズでも1、2を争うデザインの良さだと思っている。しかも、多数の触手をピアノ線で釣り上げた状態で、本体もかなりの重量がありそうなこのギニョール(人形)が、劇中ではド迫力で動くシーンなどもある。他にも、触手の動きや、鳴き声などが特徴的で、わずか数分の登場でありながら、強烈なインパクトを残すのだ。ちなみに、ファンにとっては黒歴史となっている最後の昇天シーンもある意味では強烈だ。あれを最初見た時は思わず笑ってしまった。

 とは言うものの、この作品は元々ゴジラ好きの人であればあるほど評価の高い傾向がある。ゴジラ映画の入門作としてこれを選ぶと、なかなかゴジラが登場しないこともあり、もしかすると微妙な作品だという印象をもってしまうかもしれない。入門作品としては54年公開の初代『ゴジラ』か、もしくはVSシリーズの初作品である84年版『ゴジラ』。怪獣バトルを中心に見たいのであれば2004年公開の『ゴジラ FINAL WARS』から観ることをオススメする。何作品か見て。ゴジラ映画の面白さをわかった時こそ、この作品が魅力あるものに見えてくるかと。

(斎藤雅道=毎週金曜日に掲載)

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