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『龍狼伝 中原繚乱編』第9巻、傀儡の皇帝も超人バトルに参画

 山原義人が月刊少年マガジンに連載中の架空歴史漫画『龍狼伝 中原繚乱編』第9巻が、8月17日に発売された。三国志時代を舞台にしたタイムスリップ物であるが、史実を外れたバトル展開となり、この巻では皇帝までもが超人的なバトルに参画する。

 『龍狼伝』は1993年に連載を開始した長期作品である。主人公の天地志狼とヒロインの泉真澄は現代日本の中学生であったが、修学旅行中に三国志時代にタイムスリップしてしまう。「竜の子」と崇められた志狼は当初、劉備の軍師として戦うが、「中原繚乱編」では曹操の下で呉軍と戦うことになる。
 『龍狼伝』では三国志に登場する群雄が活躍し、赤壁の戦いなど史実に沿った出来事も描かれたが、現在では仲達の存在によって史実とは大きく異なる展開になった。曹軍の武将であった仲達は赤壁の戦いで曹操を裏切り、漢の丞相になった。三国志で朝廷を擁し、最大勢力を誇っていた曹軍は都から追放された。仲達と通じている呉の都督・周瑜は荊州に軍を進める。志狼は曹操から征南将軍に任命され、竜騎兵を率いて呉軍を迎え撃つ。

 物語の序盤ではタイムスリップ物に相応しく、志狼は歴史の知識を利用して、活躍するシーンが多く見られた。しかし、連載が進むにつれ、超人的な能力を持ったキャラクター達によるバトル漫画の趣となった。
 作品中には歴史上の人物だけでなく、仙人や怨霊のような存在も登場する。志狼自身も「雲体風身」や「闘仙術」という仙術を身につけており、それが現在の彼の最大の力になっている。史実では軍師として知られる司馬仲達も圧倒的な戦闘能力を有する人物となっている。
 そして、この巻では史実では傀儡の皇帝と位置付けられる献帝までも常人離れしたバトルに参画する。帝は仲達の訓練を受け、諸将を前に「人食い魔獣」と恐れられる大虎と決闘する。帝本人が率先して戦う姿を見せることで、諸将を心服させるという筋書きである。しかし、大虎の猛攻によって献帝は左肩を負傷し、窮地に陥る。そこからの帝の戦いぶりが見どころになる。

 巻末のオマケ漫画では作者の脳卒中で入院した際の経緯が描かれている。片方の手で物をつかめなくなり、顔の半分もマヒしてしまうなど、淡々とした描写ながら病気の怖さが伝わってくる内容である。作者のライフワークとなっている『龍狼伝』で、作者の死生観が反映されるかにも注目である。

(林田力)

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