◇今週のこの1枚◇マイルス・デイヴィス「On the Corner」(1972年/Columbia)
jazzの帝王と呼ばれたマイルス・デイヴィスが大きな転換期を迎えた頃の作品で、rockにもっとも近づいた時期でもあると思います。トランペット自体も他の作品に比べ、フィーチャリングは少ないと思います。
それまでもjazzを進化させ、何度も頂点に立ったマイルスですが、アメリカで徐々に1960年代後半からrockが流行り始め、フェスティバルでもスライ&ザ・ファミリー・ストーンやジミ・ヘンドリックス等が人気を集めました。同じフェスに参加していたマイルスも時代の変化を感じ、その前のアルバム「Bitches Brew」から大きな変換を果たします。まず、それまでウッドベースだったものをエレキベースに持ち替えます。ファッションもそれまでブルックス・ブラザーズのスーツを長らく着用していたのですが、この頃からガールフレンドの影響などもあり、だんだんと派手な衣装に変わっていきます。レコーディングのやり方も、映画「卒業」のサウンドトラックが800万枚の売上を記録し、レコーディングバブルが起こり、マイルスもレコーディングスタジオでセッションを繰り返し、エンジニアがそれを編集するというスタイルに変わりました。
さらに、このアルバム「On the Corner」では、大胆なほどfunkを採り入れ、繰り返しのリズムを絶妙な編集で繋げてあります。jazzを連想している人にとっては、ほど遠い作品だと思います。リズムの録り方もアヴァンギャルドで、ドラムのコンプレッサーのたっぷりかかった音が印象的です。飛び交うパーカッションも計算されているのでしょうが暴力的に聞こえます。そんなアルバムなのですが私には取っつき易かったですね。
当然それまでも一流のミュージシャンを使ってきたマイルスですが、この頃に参加しているミュージシャンもこの後、fusionからpopsまで多岐にわたり才能を開花させます。まぁ、どの時代のマイルスも狂ってますけどね(笑)。
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