★第1位
『ホテルローヤル』/桜木紫乃
北海道のラブホテルを舞台に描かれる七つの物語。ある男は恋人を被写体にヌード写真を撮ろうとし、ある夫婦は経済的困窮に焦りながら互いを求め合う。住職の夫が不能のため苦しむ女がいれば、妻の浮気に悩む高校教師もいる。切実な思いを抱いて生きる人たちを活写した直木賞受賞作。
★第2位
『ブラックライダー』/東山彰良
食料の生産が停滞したことをきっかけにして、人間同士が食べ合うようになってしまった。その解決策として牛と人間の遺伝子を結合させた食用牛が出回ることに。まともな道徳が通用しない暗黒の時代を背景に繰り広げられる過酷な追跡劇。深い絶望の哲学が漂う極上のバイオレンス巨篇。
★第3位
『教場』/長岡弘樹
警察学校で学ぶ者たち。体罰やパワハラなど当たり前の場所で、この先自分は卒業することができるのか、脱落してしまうのか皆がもがき苦しんでいる。そんな彼らを冷徹に見つめるミステリアスな教官・風間。全く新しいタイプの警察小説。
★第4位
『満開の栗の木』/カーリン・アルヴテーゲン
離婚後、娘と暮らしながらホテル経営を成功させようと奮闘するヘレーナ。そこにやって来た客は人生に意味を見出せない男だった。孤独を感じながら触れ合う人の姿が感動的な北欧世界。
★第5位
『コルトM1851残月』/月村了衛
江戸時代。郎次は廻船問屋の番頭という表の顔を持ちつつ、大物商人の手下として人を殺し続けている。彼の武器はコルトのリボルバーだ。拳銃と刀剣がぶつかり合うアクション小説。
◎ゆくりなき雑誌との出会いこそ幸せなり
コアマガジン発行のAV情報誌『ビデオ・ザ・ワールド』が今年6月号をもって休刊。1984年創刊、30年の歴史を誇った老舗雑誌が幕を閉じた。
創刊号には、新作AVの制作ルポに加え海外売春事情や麻薬といった非合法ネタも網羅されている。後には無修整裏ビデオ満載の誌面が人気を博した雑誌だった。
AV女優のインタビューも私生活や生い立ちに深く斬り込み、女優とトラブルになった例もあったと聞く。
現在のアダルト雑誌はDVD付きが主流。ワンコインで購入し、お釣りがくる低価格も珍しくない。こうしたケースはAVメーカーの協力を得て、またはメーカーが発行に関わることにより画像や映像ソフトのコストを抑えることで成立しており、それが低価格を実現できる要因にもなっている。
だが安価に供給できるメリットがある一方、作品を真っ向から批評しづらいという難点がある。『ビデオ・ザ・ワールド』は一貫してDVDを付録に付けず、批評性を重視するのが特徴だった。その批評から、アングラ文化としてのAVの魅力や女優ら、業界人の生き様が透けて見えたものだが、そんな雑誌も、もうない。
※「ゆくりなき」…「思いがけない」の意