地面を舐めるような屈辱から鮮やかに立ち直った。今、どん底の日本経済もお手本にしたいぐらいアサクサキングスが見事なV字回復を見せている。
昨暮れの有馬記念。ダイワスカーレットの圧倒的な強さに見ほれた大観衆が、思わず見落としてしまうほどの大敗だった。シンガリの14着。前年の菊花賞馬という輝きは完全に消え失せた。
このまま終わるのか…。いや終わるわけにはいかない。そこで陣営は、強力なカンフル剤を打ち込んだ。
「攻め馬をしっかり強化したんです。普段の坂路キャンターでも1秒ぐらい速くなるようにね。成績が悪かった昨秋は、夏場の調整が遅れたのもあるけど、東京への遠征が続いてなかなか攻め切れなかった。馬体維持を優先したことで力を出し切れなかった」と寺島助手は話した。
ケン土重来を期して、この春は地元の関西圏ばかりでローテーションを組んだ。その分、時間をかけてバリバリ乗り込めた。成果はすぐ出た。京都記念を完勝し、続く阪神大賞典も、JC馬スクリーンヒーローや菊花賞馬オウケンブルースリが重馬場に苦しむなか、力強い末脚でGII連覇を果たした。
激戦が続き、さすがにその後は疲れが出た。しかし、日ごろのケイコで「貯金」をつくっているだけに回復は早かった。
「2週前に坂路で15-15を乗ってから、馬がやる気になってきた。1週前も良かったし、もう心配ありません」
その1週前は栗東DWで6F82秒9、ラスト1F11秒4。終い重点とはいえ、ゴール前の勢いは際立っていた。
「もう馬体はできているので、いい状態で出走できる。菊花賞を勝っている得意の京都だし、昨年の天皇賞・春も3着だった。その時の上位馬がいないここなら楽しみ。何より昨年より勢いがあるからね。早めに馬体を併せる形に持ち込めれば」
アドマイヤジュピタ、メイショウサムソンがいない淀の2マイル。“空位”となっている古馬の頂点を3角、坂の下りから一気のロングスパートで奪ってみせる。