アメリカではケネディ大統領暗殺事件を始めとして、国家を影で支配する勢力が不都合な大統領を排除する、あるいは排除したとの陰謀説が根強くささやかれており、またトランプ候補は不正選挙の可能性に繰り返し言及している。このようにアメリカ大統領選挙や大統領の進退には陰謀論もつきまとっており、特にトランプ候補が自らも言及しているように「当選しても陰謀によって排除される」のではないかと支持者が懸念するほどだ。
最近ではあまり話題にならなくなったが、かつてはケネディ暗殺事件とならぶアメリカ大統領の事件として、ウォーターゲート事件が言及されていた。そのウォーターゲート事件とは、共和党のニクソン大統領(当時)が対立する民主党の本部へ盗聴器を仕掛ける工作に関与、主導したとの疑いを持たれ、やがて辞任へ追い込まれた事件である。
事件の背景は長らく秘密とされていたため、今世紀に入って関係者の証言などが公表されるまで、ニクソン大統領を排除する陰謀が存在したとの「非暴力クーデター説」がまことしやかに唱えられていた。なかでも国防省による陰謀と結論づけたレン・コロドニーとロバート・ゲトリンの「静かなるクーデター」は、間違った推測ではあったものの大きな衝撃を与え、現在でもなおそれなりの影響力を持っている。
国家を影で操る多国籍企業や国際金融資本、あるいは軍産複合体が不都合な大統領を排除する、あるいは排除していたとの陰謀説は大変に人気があり、トランプ候補による大統領選が「仕組まれている」との主張に説得力を感じる支持者も少なくないのだ。では、陰謀によって退任へ追い込まれたと考えられるアメリカ大統領が何人いるかとなると、先のニクソンはもちろん、殺害や死去した大統領の全員になんらかの陰謀説が存在している。そのため、単純積算すると暗殺4名、病死4名、辞任1名の計9名で、現在のオバマ大統領まで44名のうち、約二割が不都合な大統領として排除された事となっている。
ただ、いくらなんでもこの数は多すぎるし、陰謀説には雑な思い込みに基づくものも少なくない。だが、在任中に殺害や死去、あるいは辞任した大統領の約半数に「ひとつの共通点」があり、アメリカのみならず世界を操る権力の一端がうかがえるという。
そればかりか、共和党のトランプ候補もまた、アメリカを影で操る権力にとっては不都合な人物であり、たとえ当選しても在任中に排除されるだろうと考える陰謀説マニアが存在しているのだ。
(続)