この試合を栗山英樹監督が視察したが、試合後に大谷に告げたのは意外なひとことだった。「次、1軍で行くか?」と栗山監督が聞くと、大谷は「行きます」と即答。これにより、23日、本拠・札幌ドームにおけるヤクルト戦での先発が決まった。
大谷が出した結果は1軍合格とはいいがたいものだった。昨年9月に投手から外野手に転向したばかりで、2軍戦でも本塁打0だった木村文紀に2発も被弾。7安打を浴びて、2失策が絡んだとはいえ、5失点(自責点は2)も喫するありさま。
これで、2軍では計4試合に登板。12回を投げて、13安打2本塁打8四球10失点、自責点5で、防御率は3.75と、いまひとつ安定感を欠く。当然、追試が課されるものと思ったが、指揮官の判断は予想外の昇格だった。
この背景には、1軍のお家の事情があるようだ。16日現在、日本ハムは14勝24敗で借金10。5位のオリックスに3.5差を付けられて、パ・リーグ最下位を独走中。ローテーション投手のブライアン・ウルフが体調不良で離脱しており、先発投手のコマが足りない状況だ。
さらに、チームの不振に加え、観客動員が落ちている現状もある。昨季、日本ハムは3年ぶりのリーグ優勝を果たしたにもかかわらず、年間動員数は185万8524人(1試合平均2万5813人)で、前年対比6.6%も減少した。
今季は、これまでの主催17試合で、観客動員数は40万8019人で、1試合平均は2万4001人と、さらに減少傾向にある。ゴールデンウイークこそ、3万人を超える日もあったが、金曜日を除く平日は2万人割れをする日も多い。これまで、動員に貢献してきた斎藤佑樹投手が肩の故障で、戦線復帰するメドすら立たないのが痛いところ。
客寄せパンダだった斎藤不在の今、ここで、前倒しでお呼びが掛かったのが、大谷というわけだ。16日のイースタン・西武戦では鎌ヶ谷に平日の昼間ながら、1013人の観客を動員した。同所での同一カードの動員数は、14日が631人、15日が639人で、2軍戦ながら動員力を示している。
大谷が登板する23日は木曜日で集客に苦労している現状があり、球団としては大谷の動員力に大いに期待を懸ける。
実力でもぎ取った1軍先発の機会ではないが、そのチャンスを生かすも殺すも、大谷次第。球団としては、炎上してのKO降板だけは避けてほしいところだろう。
(落合一郎)