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同じ運命を辿った二人

 SFだけではなく、物理学においても理論的可能性が語られるパラレルワールドは、同一次元の並行世界とされている。この永遠に交わることの無い複数の世界が、実は同一次元ではなく異次元に存在しているとすれば、何かの弾みで交わり、もう一人の自分と遭遇してしまうかもしれない。

 1900年7月28日イタリアのモンツァ市。催し物の来賓として訪れていた国王ウンベルト一世が、部下の将軍と市内のレストランで食事をしている時だった。先程から感じていた視線の方を振り向くと、顔も体格も自分とそっくりの男がこちらを見ていた。興味を惹かれた国王は、男をテーブルに招いた。男はこの店の主人で、日頃から国王に瓜二つだと言われ続けているという。主人に対する好奇心を増大させた国王が、様々な問い掛けをしたところ、驚くほどの共時性が認められた。双方、名前はウンベルト。1844年3月14日トリノ出身。1866年4月2日マルゲリータという女性と結婚し、ヴィットーリオを儲けた。更に店をオープンさせた1878年1月9日は、国王が王位についた日であった。興奮冷めやらぬ国王は、モンツァに来る折には必ず店に立ち寄ることを約束し、翌日の催し物での再会を楽しみに、店を後にした。

 しかし催し物が開催されても、主人は姿を見せない。それもそのはず、待ちあぐねていた国王のもとへ主人の訃報が届いた。銃の手入れ中に暴発したという。気落ちした国王が部下の将軍に、主人の葬儀に出席することと、国王名義で花輪を贈るようにと伝えていたその時、銃声が響き渡った。アナーキストのガエタノ・ブレーシが放った4発の弾丸のうち3発が国王の心臓を撃ち抜いた。

 レストランの主人と国王は、最後まで同じ運命を辿った。

七海かりん(山口敏太郎事務所)

山口敏太郎公式ブログ「妖怪王」
http://blog.goo.ne.jp/youkaiou/

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