3歳牝馬として走る最後の舞台。そこでウオッカは現役最強馬の座を勝ち取るつもりだ。牝馬にとって最も厳しい舞台といえる有馬記念。メジロラモーヌ、エアグルーヴ、ヒシアマゾン、ファインモーションといった強力牝馬が過去にも人気を集めたが、勝利には至らなかった。
3歳といえば人に例えればまだまだ「少女」の領域。そこで偉業を達成すれば、史上最強牝馬の称号も手に入れることになる。
陣営も馬もボルテージは上がるばかりだ。「今回は、そうですね、ギリギリの感じというのかな。少しでも馬の上で動くとキューンと行ってしまいそうなぐらい。心身とも張り詰めた状態にある」最高潮の仕上がりを村山助手はそう表現した。
前走のジャパンCは4着。その前に予定していたエリザベス女王杯を脚部不安でレース当日に回避するアクシデントがあった。目標を急きょ変更して挑んだ一戦だっただけに、ピークの仕上がりにはいま一歩だったが、それでも世界の強豪相手に最後方から強烈な末脚を駆使してみせた。
春のダービー圧勝ですでに実証していたが、改めてとてつもないポテンシャルを示した。そこに今回は強烈な上積みが加わる。天皇賞、ジャパンCと目いっぱいのレースを続けてきたメイショウサムソン、そして桜花賞、秋華賞と後塵を拝したダイワスカーレットなどと比べれば、伸びしろは一番あるといっていい。
「いい状態で調教を進めているし、この追い切りで落ち着きも出てくると思う。スイッチが入って競馬モードになっている」
まさに究極の仕上げ。追い込み脚質には少し気になる中山の小回りコースにも「自分のペースを守って競馬ができれば大丈夫」と、昨年の覇者ディープインパクト並みの豪脚を披露するつもりだ。
総決算を勝てば年度代表馬の座も見えてくる。あのディープも、そしてウオッカ自身も置き忘れた夢、フランス凱旋門賞へ堂々と踏み出すため、ファンに最高のクリスマスをプレゼントするため、ここは譲れない。
【最終追いVTR】1週前の時点で馬のハートは“戦闘モード”へと突入したため、今朝は坂路で単走。爆発寸前の気持ちを何とかなだめながら、道中は気分良く走らせることに主眼に置いた。それでも、ラストでわずかに仕掛けると一瞬だけ鋭い反応。馬体の張り、精神面ともにピークに達しており、この追い切りで十分といえる。