幼い頃、祖父が亡くなりました。
その夜、祖父の遺体の横に私は祖母とふたり布団を並べて眠りました。
なぜ、私が一緒に寝る事になったのか理由はわかりません。
光一つ入らない真っ暗な部屋でした。
幼い私は祖父の死体が傍にあると思うと怖くてなかなか寝付けませんでした。
「はるさーん…はるさーん…」
静寂の中、どこからともなく声が聞こえてきました。
はるというのは私の祖母の名前です。
私は声に驚いて目を開けました。
すると暗闇の中、灯りが見えました。
何と寝ている祖母の足元で七色の炎がゆらゆらと燃えていました。
炎は天井まで火柱を上げて、まるで祖母を見降ろすかのように静かに揺らめいていました。
赤、青、黄、紫等の様々な炎の色が絡み合って極彩色に光り輝いていました。
この世のものとは思えぬ美しく怪しい光景でした。
しかし、私は恐怖のあまり布団を被って眠ってしまいました。
翌朝、祖母が起きるなり私に言いました。
「昨日の夜、おじいさんが来た…」
その後、元気だった祖母はみるみる衰弱してまもなく祖父の元へと旅立ちました。
(怪談作家 呪淋陀(じゅりんだ)山口敏太郎事務所)
参照 山口敏太郎公式ブログ「妖怪王」
http://blog.goo.ne.jp/youkaiou