その強さは万人が認めるところだが、後続を7馬身突き放したヴィクトリアマイルのウオッカとは対照的なハナ差勝ち。安藤勝騎手は「勢いはあったが、ゴールを過ぎてから(2着レッドディザイアを)交わしたと思いました」と、一瞬負けを覚悟したほど、最後は際どかった。
それもこれも、「4角で内を狙うか、外に出すか迷って仕掛けが遅れた」ことが原因だった。この日は、「内を通った馬が伸びている」とインプットされたことが、名手の判断を鈍らせたのだ。しかし、外に出すと瞬時にギアが上がり、立ち木を倒す勢いでグイグイ伸びてきた。
上がり3Fは33秒6。絶望的な場面からメンバー最速の差し脚を繰り出し、力でレッドディザイアをねじ伏せた。内容は着差以上に強かった。勝利を信じていた松田博調教師は、「見ていて疲れたよ。心臓に良くないね」と苦笑い。改めて愛馬の強さを再認識した。
一方で気になるのは勝って海外挑戦のプランが持ち上がっていること。「凱旋門賞挑戦? オーナーと相談して決めますよ」。トレーナーは含みを持たせたが、ファンから見れば、年内で引退が決定しているウオッカとの夢の女傑対決も待ち遠しい。
秋は秋華賞でメジロラモーヌ(1986年)、スティルインラブ(2003年)以来の牝馬3冠を目指すのか。それとも、さらなる高みを目指し、海を渡るのか。前途洋々の女王の動向に注目が集まる。