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キャバ嬢が切れる瞬間(13) 〜貸して貸してキャバ嬢〜

 ヒメちゃんは、普段店に来るとき、およそキャバ嬢だとは誰も思えないような姿で出勤してくる。ドレスや靴はお店のを借りてるとはいえ、化粧もしてないし、頭もぼさぼさ。しかも、財布と家の鍵と携帯くらいしか入らなそうな、ちっちゃい鞄だけが所持品。これでどうやって変身するのかと思いきや、なんと他の女の子たちの私物を常に借りている。あの子にはドライヤーを、この子には化粧品を、アクセサリーまで、余分に持ってきてる子に借りる始末。

 さすがにこう毎回借りられるとこちらも困る。ケチだと思われるかもしれないけど、化粧品なんかは消耗品なわけだし、そう何度も使わせたくない、というのがお店の女の子たちの正直な気持ちなのだった。

 さて、そんなヒメちゃんはユカちゃんと仲が良く、二人組のお客さんが来たら一緒につくことが多いほどにコンビ化している。その二人は、わたしのお客さんである奥田さんが部下を連れてきた時にも、2人セットで彼らにつくことに。その後彼らはヒメちゃんとユカちゃんをそれぞれ指名するようになり、そのうち入口で「いつもの3人ですね?」と言われるほどになった。

 しかし、ヒメちゃん指名の人はまだ新卒の22歳。あまりこういうところにお金を使えないし、奥田さんも部下の分も出してあげるほどゆとりがあるわけでもないので、彼らがきたときは、ヒメちゃんだけがあぶれる形になる。
 もちろんその間、他のお客さんにつかないといけないので、ヒメちゃんもわたしたちを恨めしく見ている暇もないのだが、仕事あがりにはいつもぶつぶつと文句を言われた。

 そんなある日、奥田さんの部下の一人、ユカちゃん指名の菅野さんが一人でやってきた。結構長い時間お店にいて、珍しいなぁって思っていたくらいであまり気にしていなかったのだけど、どうもユカちゃんの様子がおかしい。気になって声をかけたら「菅野さん、わたしと付き合ってほしいって、ずっとそれしか言わないからもう疲れちゃったよ」と言ってわんわん泣き出した。確かに女の子を口説く場所かもしれないが、相手が引くほど詰め寄るのもなぁ、と複雑な気持ちになる。
 それから数日ずっとユカちゃん指名で菅野さんは通い続けていたが、ユカちゃんは具合が悪いといって、菅野さんを置いて途中で帰ってしまって以来、店を休みだした。

 そして、また菅野さんがお店にきたが、ユカちゃんはいない。なので、フリーで入ったようだけど、そこにはなんとヒメちゃんがついた。菅野さんは、2時間ほど延長して、そのままヒメちゃんを指名扱いで過ごしたらしい。
 後で、ヒメちゃんを捕まえて聞いてみたら「振られたっていうから慰めてたんですぅ。でも、大丈夫ですよぉ。指名はユカちゃんがいればユカちゃんにするはずだから、ヒメ、今日菅野さん借りただけですぅ。あてにしてたお客さんが来なくて、ノルマが達成出来ないピンチだったから、今日だけってことで指名にしていただいたんですよぉ」と、にこにこしていた。
 わたしはその件に関しては、その後ほぼ忘れていたのだけど、後日わたしの携帯に奥田さんから連絡があり、今日はまた菅野さんたちと一緒に来るとのこと。

 この日はユカちゃんもいて、ようやく少しまともに話ができるかも、と思っていた。ところが事件は起きた。続く…。

文・二ノ宮さな…OL、キャバクラ嬢を経てライターに。広報誌からBL同人誌など幅広いジャンルを手がける。風水、タロット、ダウジングのプロフェッショナルでもある。ツイッターは@llsanachanll

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