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日本人メジャーリーガーはどうなる? 和田毅編

 適応能力の高さなら、日本人選手のなかでも「ナンバー1」ではないだろうか。

 和田毅(31)は逆境を楽しむというか、アウェイの状況に置かれても、自分を見失わない投手でもある。
 その精神力の強さは、大学時代から一目置かれていた。大学・日本代表チームに選出され、アメリカに遠征したときのことだ。日本チームは練習場を与えられなかった。正確に言うと、野球場ではなく、陸上競技場しか確保してもらえなかったのだ。不平不満を口にする選手もいれば、引率の指導者から練習の指示を待つ選手もいた。しかし、和田はそうではなかった。走り幅跳びの踏み切り板をピッチャープレートに見立てて、投球練習を始めた。「どうすれば、練習ができるのか」−−。和田はそんな発想の転換をした。その精神力の強さ、応用力の高さに引率の指導者はもちろん、米球界のスカウトも「自分の練習プログラムを持ったプロ選手のようだ。本当に大学生か!?」と舌を巻いていたという。

 和田は働き甲斐のある球団を選んだ。MLBデータを見ると、ボルティモア・オリオールズは、昨季のチーム防御率が4.89。アメリカン・リーグのワーストである。投手難に泣かされた経緯をさらに探ってみると、ア・リーグ東部地区は右の好打者も多く、その餌食にされた。左投手の頭数も足らず、バック・ショウォルダー監督は「右打者を苦にしない左の先発投手」を補強の最優先項目に挙げていた。同監督とダン・デュケットGMが和田に興味を抱いた理由は「コントロール」と「チェンジアップ」だった。
 これはオリオールズだけではないが、日本人左腕が米球界で通用するには「チェンジアップが使えるかどうか」が、1つの着目点にされているという。一般論として、米球界は外角のストライク・ゾーンが日本よりも広い。その右打者の外角に「チェンジアップが投げられるかどうか」という評価があり、岡島秀樹、高橋尚成もその条件をクリアしてきた。
 また、ホークス時代から伝えられてきたが、和田の投球フォームはボールの出所が見にくい。球速は140キロそこそこだが、ボールに強烈なバックスピンも掛かっているため、打者の手元に来て浮き上がるような軌道を見せる。ショウォルダー監督も先発枠の一角を託せると評価したのである。

 しかし、不安要素もないわけではない。バックスピンの強い投球は『被弾の危険性』が常につきまとう。体力面でも「フルシーズンを投げきれるのか?」と疑問視されている。メジャーの先発投手の平均登板数は32試合。和田は26試合に先発したのが最高だ。昨季の成績を見ても、「26試合登板185回3分の2」、完投は僅か4試合。メジャーではスターター(先発)、セットアッパー(中継ぎ)、クローザーと投手の分業制が日本以上に確立されているが、「中4日のローテーションが務まるのか?」と不安視されている。『和田獲得』に二の足を踏んだメジャー球団が出たのは、そのためだ。
 古巣・ホークスの関係者によれば、和田は「オフの間、カットボール系の新しい変化球をマスターしようとしていた」という。右打者への外角球(=チェンジアップ)を際立たせるため、反対の内角を突く球種を増やしたいのだろう。

 和田は豊富な変化球の1つ1つを、持ち前の応用力でウイニング・ショットに使えるものとそうでないものを分けてくるだろう。 疲労感がピークとなる夏場を乗り切れることができれば、2ケタ勝利も十分可能である。

※メジャーリーグの選手、監督首脳陣等のカタカナ表記は共同通信社刊『記者ハンドブック新聞用事用語集』と、ベースボールマガジン社刊『週刊ベースボール』(2012年2月13・20日号)を参考にいたしました。

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