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オバマ大統領“麻生化”の兆し

 バラク・オバマ米大統領(47)に“麻生化”の兆しが出てきた。先週のニューヨーク株式市場の大暴落から景気の先行き不透明感は一層強まり、その強いリーダーシップと政治手腕が期待されている。それなのにオバマ氏は株価を「支持率調査のようなもの」とバッサリ。目先の株価に一喜一憂しない“無視作戦”をとった。これでは、都合の悪い数字から目をそむけるどこかの国の首相と同じではないか。

 オバマ氏はさきごろ「株価収益率は、長期的にみれば株が良い買い物となりうる水準に近づきつつある」と異例の“買い推奨”をブチ上げた。
 さらに株価好転の気配がないことにイラ立ち、「株式市場は日々浮き沈みする支持率調査のようなもの。すべての時間を市況への不安に費やしていたら戦略を誤る」とやった。政権支持率の急落&続落を直視できない麻生首相にそっくりではないか。
 麻生氏は内閣支持率の低下について、記者団にたずねられると決まって「世論調査は良かろうと悪かろうと真摯に受け止めるべきものだと思っています」のフレーズで逃げる。支持率が落ちたからといって政策をどうこうしない、という妙なプライドがあるのだろう。新聞は読まないとも公言しており、ネガティブな話題は徹底的に遠ざける。

 これでは国民の声がその耳に届くはずもない。そんな麻生首相に日本国民が抱く心情と同様、株価に一喜一憂しないオバマ氏の姿勢にNY市場が絶望感を持ちつつある。
 そこへきて米国雇用統計(6日発表)の悪化が重なり、もはや手詰まり感さえ漂い始めた。同統計によると、2月の失業率は8.1%と約25年ぶりの高水準。貧困層の生活がさらに苦しくなることも予想される。ところがオバマ氏は「失業の悪循環」を断ち切るため、大型景気対策を大胆に実行するよう訴えるばかり。ミシェル夫人がホームレスの人々に手作りの食事を給仕している非営利団体を訪問し、自ら調理場に立って昼食を給仕するパフォーマンスもあったが、どこまで共感を得られるかは疑問である。
 そもそもNY株の暴落は、オバマ氏が打ち出した超大型景気政策に対して、市場が「NO」を突き付けたものだ。しかし、本人がその反応を気にしないと言ってしまえばそこまで。そんなリーダーシップに市場が安心できるはずもなく、いつまでたっても景気回復の出口は見えてこない。

 米保険大手アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)の巨額赤字で再び燃え上がった金融不安の炎は、いまも消える気配がない。米政府はAIG救済のためすでに1630億?(約16兆円)をブチ込んでおり、追加支援も匂わせる。しかし、対処療法的なやり方には懐疑的な見方が広がっている。
 米国では新政権誕生から100日間は「蜜月期間」と呼ばれ、普段手厳しいメディアも政権批判を控える暗黙の了解がある。まずはお手並み拝見ということらしいが、米ウォールストリート・ジャーナル紙は早くも「オバマの過激主義がダウを殺している」との見出しで批判的意見を掲載。蜜月期間は事実上、約3分の1で打ち切りとなった。
 それでもオバマ氏はパフォーマンス先行だ。4月20日の英ロンドンサミット(G20)開幕前日には、バッキンガム宮殿でエリザベス女王と会談することが決まった。公式訪問でない米大統領と英女王が面会するのは異例のことだが、これもまた市場の信頼回復につながるはずもない。
 そんな調子だから、東京をはじめ世界中の市場が大迷惑を被っている。東証株価指数(TOPIX)はバブル後最安値を記録。それでもオバマ氏は長期的視野で米国と世界経済の再生を目指す考えを繰り返している。
 就任演説で200万人の聴衆を前に「試練は本物だ。しかし米国は克服する」と宣言したまでは威勢がよかったが、どうも雲行きが怪しくなってきた。

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