コンピューターゲームの映像表現は、まさに日進月歩の勢いで進化を続けてきた。しかしながら、グラフィック性能の向上が必ずしもゲームそのものを面白くするとは限らないのは周知の事実である。仮にFPSやオープンワールド系の作品であれば、臨場感をより高める効果があるので素直に喜べる。が、それも時と場合によるということ。たとえばDQのナンバリングタイトルがいきなり全編実写になっても戸惑ってしまうだろう。その逆で、『24』のようなシリアスなドラマが予算の都合で途中から紙芝居になったら別の意味で全米が泣く。ポポロクロイス物語のドット絵が評価されたのも、作品にうまくマッチしていたからだろう。
閑話休題。本作のドット絵は非常にハイレベルで、笑う・泣くなどの細かなモーションがうまく表現されている。また、ストーリーに直接的な影響を及ぼさない村人などのモブキャラについても実に表情豊か。さらに彼らが話す内容も事あるごとに更新されるという凝りっぷりだ。同じことをただひたすら念仏のように繰り返す不気味な住民は誰一人として存在しない。従来のRPGに比べて世界はそれほど広くないが、その分だけ1つ1つが丁寧に作られている印象だ。ストーリーが進むたびに街や村に戻って、住人1人1人に話しかけた方も多いのではないだろうか。この没入感は見事と言うほかない。
このように、本作は世界観の作り込みが素晴らしいだけでなく、主人公のピエトロ王子と旅を供にする各キャラも個性がハッキリしているために、どのキャラにもスムーズに感情移入でき、それぞれ人気が高かった。2Dの雰囲気を壊さない程度に挿入されるアニメーションも極めてハイレベルである。また、全体的にほのぼのしたテキストが多く、作品全体に優しさが漂っている。これが女性ファンも多かった理由の1つだろう。
オーソドックスなRPGなので、システム面については特段珍しい仕掛けが用意されているわけではない。誰でも安心して楽しめるというのも本作の良さの1つなのだ。ただ、戦闘に関してはやや独特である。エンカウントするとフィールドに敵が表示され、そのまま戦闘シーンに早変わり。段差や障害物はそのままなので、キャラの位置取りが重要となる。たとえば防御力が高いキャラを前面に押し出して壁とし、また遠隔が得意なキャラについては後方で支援に当たる…といった具合に、ちょうどSPRGのような感覚。雑魚相手でもそれなりの戦略性が求められ、楽勝かと思われた通常戦闘であっても少しでも判断を誤ればあっという間に全滅してしまうなかなかシビアなバランスで、狭い通路で敵と遭遇した場合は味方が邪魔になったりと、戦闘に関してはやや難ありと言わざるを得ない。
一方、本作の正式な続編である『ポポロクロイス物語II』では戦闘の難易度が大幅に緩和されたものの、逆に物足りなさを感じるレベルに。その中間の難易度を誇るのが本作とIIの間に発売された『ポポローグ』だ。ローグライクゲーム(不思議のダンジョン系)に類する作品ということもあって、戦闘のバランスに関して言えばシリーズではこの作品が一番優れている。外伝的な作品だが、ストーリーは他2作に勝るとも劣らない内容なので、ポポロ好きならプレイしても損はないだろう。
ちなみにPS1で発売されたポポロシリーズは2D作品ということもあり、いずれの作品も戦闘シーン移行時の読み込みが皆無であった点も大いに評価されたのだが、シリーズ初の3D作品となったPS2『はじまりの冒険』についてはロード時間が非常に長く不評を買うことに。ストーリーはそこそこ評価されはしたものの、戦闘が始まるまでに10秒近くのロード時間を要し、さらに戦闘中にもたびたび読み込みが発生。そして戦闘終了後にも10秒…。これではストーリーの良さもイライラでかき消されてしまう。その続編『月の掟の冒険』ではさらにロード時間が長くなるというまさかの展開に、多くのファンが離れていってしまった。懐古厨と言われようが、再びドット絵のポポロを見てみたい今日この頃である。
(内田@ゲイム脳)
■DATA
発売日…1996年
メーカー…ソニー・コンピュータエンタテインメント
ハード…プレイステーション
ジャンル…RPG
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