何かが足りない。いつものメイショウサムソンではない。6着に終わった大阪杯のレース後、鞍上の武豊騎手は首をかしげっぱなしだった。
「前回は本当、いつもの姿ではなかった。どうしてなのか、よく分からない。でも、今回は相性のいいレース。天皇賞と聞いて馬も目覚めると思う」
天才でさえ、つかめなかったまさかの大ブレーキ…。休養明けのブランクを割り引いたとしても、GI馬らしからぬ凡走だった。
一方、指揮官の高橋成師は敗因についてこう分析している。「前走は少し太め残りだったし、トモもさびしかった。何より精神面でおとなしすぎた」欠如していたのは、いつもの気合だという。
それを取り戻すため、この中間、追い日以外の通常メニューは坂路のほかにコースを取り入れた。コースで長め長めを乗ることで、サムソンの眠っていた闘志を引き出そうという作戦だ。
それが奏功し、1週前の追い切り(23日)では、唸るようなサムソンが戻ってきた。DWコースで武豊を背に6F77秒6の一番時計をマーク。“鬼の形相”で併走馬を4馬身ちぎった。
「いい動きだった。時計も良かったからね。状態さえ持ち直せば強い馬だから」手綱を取った鞍上は満足げな表情を浮かべた。
前走で不足していた気迫を取り戻し、昨年の王者が蘇った。
「あれだけ速い時計が出れば何もいうことはない。それに、もともと自分で体をつくっていくタイプ。仕上がりに関してはまったく心配していない。何よりうるささが出てきたのはいい傾向。この馬はそれくらいの時の方が走るんや」
身震いするほどの強烈なオーラを発する愛馬に、トレーナーも自信を取り戻した。
2001年春のテイエムオペラオー以来、史上2頭目となる盾3連覇へ。“冬眠”から目を覚ましたメイショウサムソンが、春の淀で雄たけびを上げる。