この時期の報告会となれば、真っ先に思い浮かぶのが、テキサスレンジャーズを自由契約となった元守護神・藤川球児の獲得策だが、球団幹部の口ぶりは重たかったという。
「阪神は藤川の代理人を務める人物との接触に成功しています。帰還に関する藤川サイドの要望を、すでに阪神は把握していると見るべきでしょう」(球界関係者)
藤川はもちろんだが、その代理人を務める有力者も帰還に関する条件事項は口にしていない。藤川が一部報道の取材に応じた限りでは日本帰還を前向きに捉えているようでもあったが、「先発転向を希望している」説など、2年余の米球界での動向とは関連性のないものも報じられている。
藤川は古巣に帰還するのか−−。
定例報告会後、坂井オーナーは関西系メディアに「(藤川の話は)全くない」と答え、足早に立ち去ってしまったという。藤川獲得を狙っているのは阪神だけではない。DeNAはかなり熱心な調査を行ってきたとされ、14−15年オフだが、巨人渉外担当者も藤川サイドにアタックしていた。藤川争奪戦はマネーゲームに発展する可能性も高い。そう考えれば、阪神首脳陣が慎重を期してダンマリを決め込むのも当然だろう。
「藤川に往年の力があるか否か、評価が分かれるところです。DeNA、巨人は守護神としてフル回転してくれとは思っていません。DeNAには山崎、巨人には澤村がいて、両球団とも投手継投策の選択肢を広げるため、経験豊富な藤川を必要としているんです。阪神だけは事情が違って…」(プロ野球解説者の1人)
阪神にも呉昇桓という絶対的な守護神がいるが、「呉昇桓>藤川」なる評価で交渉に臨めば、渡米前の功績を「否定された」との誤解も与えかねない。また、先発転向説が本当ならば、ローテーションのやり繰りにも困っている戦況を救ってくれるかもしれない。いや、岡田彰布監督の時代から“救援一筋”だったため、「先発・藤川」がどこまでやれるかは未知数だ。下位に低迷する戦況からして、藤川に調整で先発登板する余裕はないはず。
前出の球界関係者もこう言う。
「藤川の代理人を務める人物と阪神はイザコザがあったんです。その人物は14〜15年オフ、国内FA権を行使した金子千尋(オリックス)の『相談役』ともなり、交渉に当たろうとした球団の窓口役を務めていました。阪神は金子の希望を聞きたいとし、その代理人と直接会って話をしてきました。でも、『その内容が報道に漏れている』と抗議されていました」
阪神フロントには機密事項をバラすような輩は一人もいない。両者の間に誤解があるのかもしれない。
長く、阪神のブルペンを支えた藤川が再びタテジマのユニフォームを着れば、チームはもちろん、ファンも鼓舞するはず。しかし、「交渉しにくい」という現状を打破する話は聞こえてこない。