こちらの標本は供養も済ませており、現在では館内に展示されながら安らかな眠りについている。
だが、中には今なお晴れぬ恨みを抱え続けたまま、展示されている頭蓋骨が存在している。
1907年7月3日、イギリスはスコットランド郊外の城主であったイアン・マックシェイプ卿が絞首刑に処された。友人に裏切られ、無実にもかかわらず殺人の罪を着せられたのだ。無罪の訴えも虚しく、彼は処刑された。残された彼の妻は遺体を埋葬し、頭蓋骨のみ城内の一室に安置することにした。しかし、それからというもの、城内に人の叫び声のようなものが響き渡るようになった。非常に大きなその声は、マックシェイプ卿の頭蓋骨が安置してある部屋から聞こえてくる。恐れおののいた人々は、やむなく卿の頭蓋骨を別の場所に移動させ、可能であれば再び埋葬しようとした。しかし、使用人の一人が頭蓋骨を持ち上げようとすると、いきなり頭蓋骨が震えながら叫び出したのである。それはまるで人の断末魔のようであった。使用人は驚いてその場に戻したものの、それから高熱を出して急速に衰弱していき、三日後に亡くなった。それ以降、何度かマックシェイプ卿の頭蓋骨は移動や埋葬の話が出たものの、移動のため触れた人がことごとく衰弱して亡くなってしまうようになった。いつしか人々はこの頭蓋骨を恐れ、そのまま城内に安置することにしたのである。
城は継ぐ者がいなくなったため今は廃城となってしまったが、観光地として一般公開されるようになった。観光客の中には、噂を聞きつけ頭蓋骨に触ってみようとする人がいたが、殆どは頭蓋骨の迫力に恐れをなして触る事はなかった。
しかし、1993年の8月にスペインからの旅行客が噂を恐れることなく持ち上げてみた。その時は頭蓋骨から悲鳴が上がる事もなく、80年経って城主の呪いも解けたのかと皆が安心したのだが、彼は宿に帰ってから原因不明の頭痛と高熱に悩まされ、病院に着く前に心臓発作で亡くなってしまったという。呪いは未だに生きていたのだ。
写真:お台場「妖怪博物館」展示の頭蓋骨(本物)
文:和田大輔 取材:山口敏太郎事務所