大雨にたたられた今年のダービー。“田んぼ”状態の泥んこ馬場では、やはり切れ味よりパワーを求められた。ロジユニヴァースとアンライバルドの明暗を分けた最大のポイントは道悪の巧拙だった。
「向上面ですでに首を上げて走る気がなかった。直線でのフォームなんかもうバラバラだった」(友道調教師)アンライに対し、ロジはしっかりとした踏み込みで抜群の行きっぷり。終始、ラチ沿いピッタリのまったくロスのない競馬は、同じく道悪だったラジオNIKKEI杯2歳S、弥生賞の再現VTRを見ているかのようだった。
15度目の挑戦で悲願のダービージョッキーとなった横山典騎手は「馬場が内も外も同じ状態だったので、ロスなく運び、負担をかけないことだけを考えていた。内から離れる気持ちはひとつもなかった。雨が味方してくれたのは間違いないが、勝つ時というのはこんなもの」とニンマリだ。
普段は決して口数が多いとはいえないベテランをじょう舌にさせたもうひとつの理由は、決してデキが万全ではない中で、ロジが見せた“底力”にあった。
「中間の動きから、『この状態で勝負になるのか?』と思っていた。報道陣にも、『いい』とは言えなかった。競馬は本当に何が起こるか分からない。(競走馬の)底力、生命力の成せる業としか言いようがない」
「ダービーは時の運」と横山典が言えば、「皐月賞(14着)と違ってすべてがラッキーだった」とは、久米田正明オーナー。くしくも1枠1番は悪夢の皐月賞と同じ。ただ、今回は不良馬場が大きなアドバンテージとなった。
天国から地獄に突き落とされたアンライバルドに、地獄の淵からよみがえったロジユニヴァース&リーチザクラウン(2着)。再び今年の牡馬クラシック戦線は“三国時代”に突入した。果たして3冠ラストの菊花賞ではどのようなドラマが待ち受けているのか。