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どこからか砂が飛んでくる ー中部・近畿に出現する「砂かけばばあ」

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画像はイメージです。

 八風街道は、滋賀県東近江市八日市から近江八幡市方面へつながる街道である。この街道は小脇町辺りで、近江八幡と安土に分岐する。このような分岐点のことを追分といい、このような場所にはたくさんの竹薮や笹薮が生い茂っていた。昔、安土へ荷物を運んでいると、小脇町辺りに差し掛かった時、何者かが砂をかけてきた。しかし、辺りには誰もいないし、風も吹いていない。正体を確かめようと、薮の中に入ってみても辺りは静まりかえって人がいる気配はない。「砂をかけたヤツは誰だ!」と大声で叫んでも薮の中はシーンと静まりかえっているだけであった。

 この奇妙な現象は、奈良県や兵庫県などの近畿地方でいう「砂かけ婆」という妖怪の仕業とされる。実際に砂をかけられたという事例もあれば、砂をかけられたような音だけが聞こえただけという事例もある。「砂かけ婆」は、『大和昔話』などにも記載されているように、さびしい森影などを通ると、砂をバラバラと振りかけて、人を驚かす。砂をかけるだけで、別にそれ以上悪事を働く訳でもない。
 砂かけ婆はTV放映もされた『ゲゲゲの鬼太郎』で、鬼太郎ファミリーのメンバーの一人として登場し、全国的に有名な妖怪になった。キャラクターとしての設定は、鬼太郎の保護者的役割を務め、妖怪アパートを経営しており、住処を失ったりした妖怪の面倒を見たりもしていた。その性格は、短気であるが正義感が強く、他人を救うために自分を犠牲にしていた。この他にも『河童の三平・妖怪大作戦』にも「砂かけのお婆」として登場していた。
 しかし、人に姿を見せないし、古文献の絵巻などにも描かれていないために姿形が不明とされるこの妖怪が、何故老婆の姿だといわれているのかは解っていない。砂かけ婆の正体はタヌキやイタチなどの小動物であるともいわれている。これらが人に砂をかけるという現象は全国各地に伝わっているが、砂をかける瞬間を目撃した者はいない。「砂かけ婆」という名称で一般に知られているが、実は雪女のように美人や若い娘の姿をした妖怪だったら? …本人は相当ショックであろう。

(画像:「砂かけ婆」増田よしはる・画)

(皆月 斜 山口敏太郎事務所)

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