「やっぱり給与の高さに慣れてしまったのが、キャバ嬢を辞められない原因でした」
加奈子は元々、時給1100円の飲食店で働いていたが、もっと稼ぎたいという思いから夜の世界へと足を踏み入れた。いざキャバクラを始めてみると時給は5000円。それまでの時給の4〜5倍にまで跳ね上がることに興奮を覚えた。そして昼の仕事をするのがバカバカしくなった加奈子は、飲食店のバイトを辞め、週3日5時間だけキャバクラで働くことにしたのだった。それでも給与は月30万と、加奈子には十分な額だった。
「この世界に入った時に思っていたのが、何か嫌なことがあったら辞めてやろうということでした。でもいざ働きはじめるとお金の魅力に取りつかれてしまい、嫌なことがあっても結局辞めることなく、今までズルズルと続けてしまいました」
ただお金を稼ぐ。それだけを目的に入った加奈子は、他のキャバ嬢たちと仲良くする気は毛頭なかった。他のキャストは店内での居場所を作るために、先輩キャバ嬢へうまく取り繕うものが多い。しかし加奈子は、軽い挨拶をするぐらいで、あとは店の裏では無愛想に振舞っていたという。
「私はあまり女の派閥とか群れることが好きじゃなかったんで、誰とも仲良くしなかったんですね。それが原因なのか、物を隠されたり、ネットの掲示板に悪口を書かれたり散々でした。一番辛かったのは携帯電話をどこかに捨てられた時、それで大勢のお客さんとの連絡手段を失いました」
どんなイジメを受けても、お金のためにとキャバ嬢を続けてきた加奈子だったが、次々と若いキャバ嬢が入ってくるというプレッシャーや、金銭的にも美容や衣服代がかさむことで夜を棄てる決意をしたという。
「今後のことを真剣に考えたんです。このまま夜の世界にいるよりも、社会的補助を受けて、昇給やボーナスなどの待遇をちゃんと受けた方がいいと、そう思いました」
しばらく生活するだけの貯金はあると言っていた加奈子。現在、彼女は都内で就職活動中である。