「厩舎に運がないのかな…」。松元調教師の自虐的なつぶやきが悔しさを物語っていた。前走の京都大賞典、アルナスラインは1番人気に支持された。休み明けだったとはいえ、菊花賞2着の実績に加え、3歳の身で挑戦した昨年が3着の大健闘。陣営も自信を持って挑んだ一戦だった。
ところが…。「行くところ行くところ前が詰まってしまい、正味追えたのはゴール前ぐらいだった」という不利の連続。勝負どころの3角過ぎから他馬にピタリと外からマークされる形になった。大きなフットワークが持ち味のアルナスにとっては完全に消化不良の競馬となってしまった。
その分、今回にかける意気込みはハンパじゃない。「東京コースは最も相性のいいコースでしょ。完歩が大きいから広いコースは力を出せるんだ」。中間の調整も入念だ。栗東の坂路とプールでじっくり調整されており、10月29日には800メートル54秒8、ラスト1F13秒2。さらに2日には56秒9→12秒9をマーク。「いい感じできている」とトレーナーは自信を見せた。
目標はジャパンC。出るためにはここで重賞初勝利を飾って賞金を加算しなくてはならない。その思いは鞍上にも表れている。今回から内田騎手にスイッチしたのだ。
「左回りで右ステッキを入れるとモタれてしまう。そのあたりに注意してほしい。まっすぐ走れば勝てるはずだから」と師。もちろん、地方時代から癖馬を難なく乗りこなしてきた名ジョッキーにかける期待は不安よりもはるかに大きい。豪快に突き抜けてきそうだ。