都庁前、午前9時10分号砲。青く晴れ渡った冬の空に、白い紙吹雪が舞った。一斉に飛び出したランナーたち。沿道の声援に笑顔で応えながら、さっそうと駆け抜けていった。
個性的ないでたちをしたランナーが多く見受けられた。多数派は、ウサギやカエルなどの動物人形やカラフルなアフロのかぶり物系。中には、メイド服やチュチュ、黒ずくめの忍者や、アニメ「ヤッターマン」のヒロイン、アイちゃんの格好をしたコスプレーヤーの姿もあった。
ひときわ目を引いたのは、日テレ女子アナ軍団。お色気ショットの盗撮や、熱狂的ファンの思い余っての襲撃を警戒してか、複数の伴走者を盾にしての厳戒態勢だった。沿道からは「もっと見せろ!」コールは上がらなかったものの、ちょっぴり残念な感じが漂っていた。
女子アナとともに過酷なレースに華を添えてくれたのが、一般参加の女性ランナーたちだ。レース終盤に差し掛かると、歯をくいしばり、ストイックに自分のギリギリに挑戦しながらも、その姿は可憐で美しいのだ。苦痛に耐える姿が痛ましく、つい手を差し伸べたくなる。“マラソン萌え”なる現象もそこかしこで起きていたに違いない。
レース後の彼女たちを直撃した。
ゴール近くで“体育座り”し、おいしそうにバナナを食べていた島崎綾子さん。「28〜38km地点が、もう死にそうでした。ホントによく頑張ったなと思います。来年も絶対に出ます」とニッコリ。ゴール直後、息を弾ませながら答えてくれた毛利仁美さんは、「昨年は抽選もれしちゃったので、今年参加できて、しかも完走できたのが本当に嬉しい!」。
疲労がピークに達している中、快く取材に応じてくれたほとんどの女性が、早くも次回の出場を誓っていた。美しさをさらに輝かせる、まぶしい笑顔が印象的だった。
東京マラソンの見どころは、招待選手やタレントの活躍だけじゃない。来年からは、女性ランナーに特に注目だ!
スポ根ドラマとは別の困った盛り上がりがあった。コース沿道ではダンスや歌などのランナー応援イベントが大会に華を添え、38km地点の豊洲では女子美術大チアダンス部の演技を大勢の素人カメラマンが取り囲んだ。地面すれすれのローアングルに笑顔がくもった。
先に演技を終えた女子高生チームが「萌え〜っ!」とコールするほどキレのあるアクション。ちょうど宮崎県の東国原英夫知事が通過したが、群衆はそっちのけでシャッターを切った。同部リーダーの小林さやかさん(23)は「正直言ってカメラが気になった。文化祭などでは規制してもらうんですが…」と話した。
タレントなど著名人では、猫ひろし、勝俣州和、にしおかすみこ、竹山隆範、川田広樹、鈴木宗男衆院議員らが完走した。日テレ美女アナ軍団は葉山エレーヌ(25)が体調不良で出走取り消し。制限時間約25分前にフィニッシュした夏目三久(23)は感極まって涙ぐみ「みなさんに感謝の気持ちでいっぱい」と足をひきずりながら引き揚げた。
大会会長の石原慎太郎都知事(75)は制限時間ぎりぎりの最終ランナーらを出迎えた。額に「男」と書いた男性ランナーとメイド服で仮装した女性ランナーのカップルも笑顔で迎え入れ、記者団に「きょうは東京がひとつになった感じがつくづくした」と満足げだった。