都心に、人間の手が加えられない雑木林があるという。森ガールに会えるかもしれない。現地へ向かった。
その場所とは、「国立科学博物館附属・自然教育園」(東京都港区)である。JR目黒駅から歩いて5分ほどの場所。東京の環状線である山手線の内側にある。
「国立科学博物館附属・自然教育園」の場所には、400年から500年前は中世の豪族の館があった。江戸時代には高松藩主松平頼重の下屋敷があり、その後、陸海軍の火薬庫、白金御料地と歴史を重ねた。一般の人は足を踏み入れることが出来なかったため、豊かな自然が残されている。
1949年に天然記念物、史跡に指定され、一般公開が始まった。
園内では、薪や炭に利用するための下刈りや、落ち葉かきも行われない。新芽は鳥のえさとなり、光を得られない若木は枯れていく。「自然教育園」の雑木林は、自然のままにその姿を遷え、園内では、ホタルを見ることもできるらしい。
「自然教育園」に入ると、足もとの空気が冷たい。落ち葉を踏みしめて進むと、森へ通じる道がある。
「自然教育園」では、毎月、「今月の見どころ」を紹介するパンフレットを配っている。園内に立てられたプレートも、観賞者に親切。
12月の見どころの一つに、クマザサの葉があった。冬になると、長細い葉のへりが白く枯れ、中央部の緑との対比が美しい。プレートには、「クマザサの名前のいわれを、葉のようすから考えてみてください」とある。答えはパンフレットに記載されているのだが、ここに書くわけにはいかない。ヒントは、へりが枯れる様子を「くまどる」と表すことにあるという。
「自然教育園」は、歩いて1時間ほどの広さだ。紅葉に見とれていると、急勾配の斜面にさしかかり、沼が広がっていたりする。東京は武蔵野台地の東端にあり、坂や丘が多い。森鴎外の小説『雁』の主人公は湯島の無縁坂をよく散歩するが、詩人や文学者たちが歩いたころの東京の原型が、「自然教育園」には残されている。
「自然教育園」を一周したが、森ガールには会えなかった。森ガールはいなくても、せめて2011年の干支の「うさぎ」はいてほしい。2010年の「とら」と併せて、「自然教育園」に生息するのかを、職員の方に聞いてみた。
答えは、残念ながら、ノーであった。しかし、職員の方は、最後に、こうつけ加えてくれた。「たぬきならいます」。(竹内みちまろ)