東京都で『文化・スポーツ等特別推薦』なる制度が設けられたのは、04年に逆上る。この制度を“利用”したいとする公立高校側が『硬式野球』『サッカー』『陸上』『バレーボール』『バスケットボール』などの一部スポーツ種目に特別枠を設け、その試験内容は各校の学校長が決めている。吹奏楽や書道、美術の分野にも及んでいて、どの公立高校が、何のスポーツ種目、文化系クラブ活動で特別枠を設けているかが公表されている。
しかし、誰でも受験できるわけではない。一例を挙げると、「中学時代での部活動で都大会出場」、「もしくはクラブチームで全国大会に…」とある。つまり、強豪私立がお誘いを掛けてもおかしくない球児しか受けられないのだ(高校側からの勧誘は禁止)。試験内容は面接、小論文(作文)。実技試験の有無は高校によって異なるが、定員は種目ごとに2、3人。学費に関する特別待遇はない。だが、近年、公立校は同制度によって、強豪私立校のような“スポーツエリート”を集めてきたのだ。人数はごく少数であり、他県に受験資格者を拡大していない点はかつての特待生制度と大きく異なるが、「私立よりも公立を」と考える父母もいる。また、昨夏の東京都大会(甲子園予選)を振り返ってみると、東東京大会では江戸川と城東がベスト4入りし、雪谷もベスト16入りしている。西東京大会でも日野が都立勢として33年ぶりの決勝戦進出を果たした。これらの公立校は『文化・スポーツ等特別推薦』があり、同制度がチーム強化に繋がったと見ていいだろう。
『21世紀枠』でセンバツ大会に選ばれた小山台高校(東京)は、多くの国公立、有名私立大学合格者を出していることでも知られる。同校は『文化・スポーツ等特別推薦』の制度を適用していない。ゲームセットの瞬間まで必死に戦った同校の姿はもっと評価されるべきではないだろうか。蛇足だが、公立校が有名私立校に勝つと大きく扱われる。少子化によって、公立も私立も生徒数の減少している。学校側が教育プログラムに特徴をつけ、受験生にピーアールするのは止むを得ないだろう。公立と私立を差別しない、他県からの野球留学生の努力も認める−−。そんな高校野球の楽しみ方もあってもいいのではないだろうか。(了/スポーツライター・飯山満)