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『白竜LEGEND』第19巻、愚連隊は敵役としても力不足

 天王寺大原作、渡辺みちお画で『週刊漫画ゴラク』に連載中のヤクザ漫画『白竜LEGEND』第19巻が、10月19日に発売された。この巻では主人公の白竜らがヤクザ以上に無軌道な愚連隊を叩きのめすが、 愚連隊は敵としても力不足であった。
 冒頭の「六本木極楽浄土」編は前巻からの続きである。ここで登場した六本木を根城として暴れ回る愚連隊という設定は、市川海老蔵に重傷を負わせた元暴走族集団を連想する。『白竜』には西武鉄道の名義株や暴力団の東急電鉄株式買い占めなど現実の黒社会の事件を下敷きにしたストーリーが多い。そのために「六本木極楽浄土」編では海老蔵事件のアナロジーへの期待も高まった。

 『白竜』のようなヤクザ漫画では粋がっている暴走族や愚連隊はヤクザに叩き潰される展開が定番中の定番である。『白竜』でも過去に鮫川順也の率いる暴走族が白竜らに瞬殺されている。「六本木極楽浄土」編でも最終的には白竜が愚連隊を叩き潰す展開は容 易に予想できる。
 ヤクザは社会的には悪であるが、暴走族や愚連隊のような社会に迷惑をかける集団をヤクザが叩きのめすことは勧善ではないとしても、懲悪のカタルシスがある。ヤクザ漫画にとって暴走族らは格好のヤラレ役である。現実に「六本木極楽浄土」編では白竜は六本木の商店主の役に立っており、無法者の愚連隊との対称性を際立たせている。
 しかし、期待に反して「六本木極楽浄土」編は海老蔵事件のアナロジーではなかった。愚連隊は巨悪に使われる麻薬中毒の小物に過ぎず、主敵は型破りの住職であった。海老蔵事件では元暴走族という肩書きが凄みよりも、いい歳して元暴走族と呼ばれることが恥ずかしいと嘲笑の対象になったが、もはや愚連隊は物語の敵役として描くほ どの価値もなくなったことを示している。

 この傾向は少年向けのヤンキー漫画にも表れている。加瀬あつしが1990年代に『週刊少年マガジン』で連載した『カメレオン』は主人公がヤンキーとして成り上がる内容で人気を博したが、連載の長期化によってヤンキー自体が時代遅れの恥ずかしい風俗になった。それには『カメレオン』も敏感で、後半ではヤンキーが時代遅れであることを風刺する自虐的なギャグも登場した。さらにラストは大学受験というヤンキーとは無縁のイベントが展開された。
 愚連隊がヤラレ役という予想通りの展開に終わった『白竜』第19巻では「紛争ダイヤモンド」編も収録する。これは悲惨なアフリカの内戦を背景に、ダイヤモンド利権の闇を描く。日本では 認知度が低いものの、闇の深い問題であり、『白竜』にとって好素材になっている。

(林田力)

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