まさに口あんぐりの世界戦であった。興毅は1、3、4回にダウンを奪う圧勝だった。といえば、聞こえはいいが、挑戦者のマシアスは、とても世界王座に挑むレベルの選手ではなく、絶句したボクシングファンも多いことだろう。興毅はバンタム級での防衛戦のなかで、「一番いい試合だった」と評したが、ただ単にKOすればいいというものではない。
リアルライブで度々報じてきたが、興毅はバンタム級に転級後、強豪選手との対戦を避け続けてきた。昨年12・26さいたまでの王座決定戦ではランキング5位の選手に勝っての王座奪取。以降、防衛戦ではV1戦(5・7大阪)が14位、V2戦(8・31日本武道館)が8位、そして今回のV3戦は12位の選手。これだけ、ランキング上位の選手との対戦を回避すると、チャンピオンとしての権威も疑われるし、なによりバンタム級での興毅の実力が計れない。
そんな興毅も来春に予定されるV4戦では、いよいよ逃げられない状況に追い込まれた。次期防衛戦は指名試合になることが確実。興毅はWBA同級暫定王者のウーゴ・ルイス(メキシコ)、バンタム級に階級を上げた前WBA世界スーパーフライ級王者=ウーゴ・カサレス(メキシコ)の名を挙げた。カサレスは8・31日本武道館で清水智信(金子=現休養王者)に敗れ、同王座を明け渡したが、スーパーフライ級、ライトフライ級(WBO)の2階級を制覇した強豪。指名試合となれば、暫定王者またはランキング最上位者との対戦は避けて通れない。
興毅は今後のプランについて、他団体との統一戦、V5後に4階級制覇を掲げた。そこにたどり着くためには、次の指名試合で防衛することが必須条件となる。興毅のバンタム級での真の実力が次期防衛戦で問われることになる。
なお、メーンイベントで行われたWBA世界スーパーフライ級タイトルマッチ、王者=テーパリット・ゴーキャットジム(タイ)対挑戦者=次男・大毅の一戦は、3-0(115-113、116-112、119-110)の大差で王者の判定勝ちで、大毅の2階級制覇はならず。三男・和毅はエドゥアルド・ガルシア(メキシコ)に、7回1分23秒、KOで勝利した。
(落合一郎)