8・30『SMASH.7』のリングに初めて上がったポール・トレイシー。IWGPジュニア二冠王であるプリンス・デヴィットと以前タッグを組んでいた経歴がある。TAJIRIはトレイシーを見て「ジョーカーみたい」と語っている。引いてはならないジョーカー、すべてのカードと同じ価値のあるジョーカー、切り札的要素のあるジョーカー…。ジョーカーと一言でいえば簡単なものだが、様々な魅力を秘めているような気がする。
第1試合、ワールドトライアウトマッチとしてトレイシーが対戦したのはAKIRA。試合序盤、AKIRAのバックを取ったトレイシーは、馬飛びの要領でひょいと飛び越える。そのまま体を反転させてスクールボーイで丸め込んでいく。かと思えば、ロープワークの最中に華麗なリープフロッグから背面飛びのジャンピング・エルボーパッド。AKIRAのオールドスクール、ミサイルキックに耐えたトレイシーは逆襲の変形フェースバスターを見せる。結局AKIRAのムササビプレスの前に敗れてしまったトレイシーだが、TAJIRIの言う「ジョーカー」の本領を発揮するのは次回以降かも知れない。
第4試合、ワールドトライアウトで合格点を出された外国人レスラーMentalloが、弟子であるケニー・オメガとシングルマッチを行った。2002年にこの二人が対戦したカードは、カナダの年間最高試合である「マッチ・オブ・ザ・イヤー」を受賞している。その名に恥じることの無い戦いが繰り広げられる。
ケニーのグラウンドヘッドシザースを倒立で返そうとするMentallo、観客の声援に応えるかのように倒立したまま足を開いたり、前後に交差させたりしていたが…そんなMentalloの脳天をマットに叩き付けるケニー。トップロープの反動を使ってアームホイップ、風車式バックブリーカーで対抗するMentallo、場外に出たケニーに対してスライディングキック。今度はケニーがお返し。ブレーンバスターの体勢で持ち上げたMentalloをトップロープに固定すると、トップロープからエルボードロップを首筋に放っていく。ロメロスペシャルからカナディアンバックブリーカーを決めたケニー。Mentalloはロープに走ったケニーにドロップキック、串刺し式のジャンピング・エルボーパッドからノーザン。ケニーもコタロー・クラッシャーで反撃。一進一退の攻防が続く。カミカゼからその場飛びのシューティングスターを狙ったケニーだが、逆にMentalloのカミカゼがケニーを襲う。ムーンサルトに行こうとしたMentarroの背後にドロップキック。場外に落ちたMentalloに向かってケニーはノータッチ・コンヒーロで追い討ち。場外のカウンターで繰り広げられたツームストンの打ち合いを制したMentalloはケブラーダ。場内に戻るとMentalloはパワーボムからトップロープに登ってダイビング・ギロチン。ムーンサルトを自爆させたケニーは蒼い衝動。投げっ放しドラゴンから波動拳を炸裂させ、クロイツ・ラスの体勢に。切り返したMentalloは回転エビ固め、カウント2で返したケニーは再度波動拳を狙うが、Mentalloの昇竜拳が火を噴く!
しかしロープに走ったMentalloを担ぎ上げたケニーがとどめのクロイス・ラツを放ってピンフォール勝ち。ベストマッチの名に恥じない好勝負だった。
セミファイナルではフィンランドFCFの原始怪獣、ヘイモ・ユーコンセルカがKUSHIDAとシングルマッチで対戦。巨大な壁に立ち向かっていったKUSHIDAだが、原始怪獣のパワーは予想以上のものであった。序盤戦はヘイモのスタミナを奪おうとしてヘッドロックでぐいぐい締めあげるKUSHIDA。ショルダータックルで場外に落ちたKUSHIDAを追うヘイモ、フェースバスターで叩きつけられるが、カウンターからのクロスボディーを受け止める。豪快なショルダースルーでKUSHIDAが文字通り宙を舞う。トップロープからのダイビング・エルボードロップを自爆させたKUSHIDAはトラースキックから卍固め。力で跳ね返したヘイモはオクラホマ・スタンピートの要領でKUSHIDAを叩き付ける。丸め込み技でヘイモを混乱させたKUSHIDAは体格差なにするものぞ、とばかりにジャーマン・スープレックス。追い討ちのミッドナイトエキスプレスを自爆させられてしまったKUSHIDA、最後はヘイモのパンプ・ハンドル・スラムの前にピンフォール負けを喫してしまう。試合後のTAJIRIは「まだまだ甘い」とKUSHIDAを一喝。対大型外国人選手戦の甘さを指摘。
次回SMASH.8にはFCFから「空飛ぶオカマレスラー」ジェシカ・ラブ、謎に包まれている覆面レスラーのカゲマングロ、ワールドトライアウト合格のゴーレム・ナイト、韓国からは怪しさ全開のキム・ナンプンが強豪レスラーを引き連れてやって来る。
スター・バック、ヴァレンタイン、ヘイモ・ユーコンセルカ、ジェシカ・ラブ、スターク・アダー。
キム・ナンプン、ユン・ガンチョル、Mentallo、ポール・トレイシー、ガルビンダー・シラ。
SMASH.4〜7に登場した知られざる外国人レスラーたち。しかし観客は彼らを絶賛した。最近のプロレスでは見られなくなってしまった「日本人対外国人」の様相、SMASHのリングにはそれがある。日本人レスラーにはない風格、キャラクター性、アピールなど、外国人レスラーならではのパフォーマンスは他に例を見ないものだ。SMASHの会場で新たな発見をするのは、貴方かもしれない。
(Office S.A.D. 征木大智(まさき・だいち))
◆『SMASH.7』
2010年8月30日(月)
会場:東京・新宿FACE(観客600人=超満員札止め)
<メインイベント タッグマッチ 時間無制限1本勝負>
○スター・バック&大原はじめ(9分17秒 体固め)●TAJIRI&小路晃 ※パイルドライバー
<セミファイナル シングルマッチ 時間無制限1本勝負>
○ヘイモ・ユーコンセルカ(13分20秒 片エビ固め)●KUSHIDA ※パンプ・ハンドル・スラム
<第4試合 シングルマッチ 時間無制限1本勝負>
○ケニー・オメガ(17分50秒 クロイス・ラツ)●Mentallo
<第3試合 タッグマッチ 時間無制限1本勝負>
朱里&○リン・バイロン(11分36秒 片エビ固め)植松寿絵&●中川ともか ※ムーンサルト・プレス
<第2試合 シングルマッチ 時間無制限1本勝負>
○TAKAみちのく(7分27秒 ジャスト・フェースロック)●児玉ユースケ
<第1試合 ワールドトライアウトマッチ 時間無制限1本勝負>
○AKIRA(7分58秒 体固め)●ポール・トレイシー ※ムササビプレス