−−舞台「風は垂てに吹く」はどんな作品ですか?
北川:空の上で行方不明になったと言われている人たちが生と死の間みたいな世界で天国にも地獄にも行けずにさまよっていて、わたしがひょんなことからその世界に飛び込んではじまる物語が描かれています。難しく感じるかもしれないですが、実際はとてもわかりやすく、心温まる物語になっています。
−−舞台は過去何本くらい出演されているんですか?
北川:今回で3本目です。すごく少なくて…。しかも前の2本は時代劇。今回は初の現代劇で、初主演になります。稽古初日の緊張感は半端無かったですね(笑)。初日からいきなり通し稽古があったり(笑)。
−−映像と舞台とでは演技の方法も変わるんでしょうか?
北川:これまでの舞台はどれも大きな劇場でした。今回は200くらいのキャパなので、同じ舞台とはいえ、表現の仕方がまったく変わってくるんです。身振りの大きな演技ではなく、映像と同じようなナチュラルな演技も求められると思います。
−−舞台で初座長。やりがいも感じるのでは。
北川:感じますね。でも、まだ人を動かせるほどの余裕は無いです。とにかく自分のお芝居をきっちりとやって、まわりも見ていけたらいいと。舞台のような場所で自分を爆発させるような役に出会いたいとずっと思っていたんです。自分が納得できる芝居をみなさんにお見せしたいです。女優としてもターニングポイントになりそうな作品だなと思っています。
−−役も既婚者の役。プライベートの自分を投影しやすいのでは。
北川:はい実際自分も結婚しましたし、すごく感情移入しやすい役だと思います。等身大で演じることができる役。何でも経験しておいてよかったなって(笑)。役自体をわたしのキャラに近づけてくださったりしたので、とてもやりやすさがあります。
−−役作りについてですが、プライベートから自分を役に近づけていったりするタイプなのでしょうか?
北川:そうですね。でも、役者は演技をしていても、どこかに自分がいないとずれると思うんですよ。なりきるといっても、なりきった上で自分がどこかで見ていないと調整が難しくなる。どちらかというと自分と役が半々になるようにやっていく感じですかね。
−−テトラクロマットさんの舞台はどんな雰囲気なのですか?
北川:テトラクロマットさんの舞台は空間をとても大切にする舞台なんです。空間作りについてもみなさんにイメージしてもらいやすいように作っていかないといけない。セットもすごく少ないので、役者としても無いものをあるように見せる工夫が必要になってくると思っています。
−−北川さん自身はこの舞台に限らず、今後も女優としての活動を中心にやっていきたいと思っているのですか?
北川:ずっと続けていければと思ってますが、それだけにとらわれたくないとも思っています。色々なことに挑戦していきたい気持ちがあるんです。周囲は「女優として頑張っていこうよ」というスタンスだと思うんですけど、30くらいの時にそれまで13年くらい周囲の言われる通りにやってきたのを、ちょっと変えたいなって。少しずつ寄り道もしたいって。結婚もしましたし、これからは自分なりの道を探していけたらいいなって思っているんです。
−−女優以外にもこんなことができるという、まだ僕らが知らない北川さんの側面がご自身の中にたくさんあるということなんでしょうね。
北川:そうですね。言われることだけをやっていた時期もあるんですけど、それはどうかなって思う気持ちがあって…。例えばトライアスロンを始めたときすごく心配されたんです。「(女優なのに日に)焼けるでしょう」って。山登りも好きで富士山に行くっていったら「危ない」っていう話になってしまったり…。でも、登山家の役が来たときに経験があることは武器になるし、何でも言われる通り、「はい、そうですね」って言うだけじゃダメだって思うようになったんです。多少言われてもやろうって。今のほうが自分らしい感じでやれていると思います。
−−目標にしている人はいるんですか?
北川:わたしは姉をすごく尊敬しています。姉は、常に勉強し続ける人で、とても学べることが多い人です。歳は十歳違うんですけど、相談する相手もたいてい姉です。姉から言われることはすごく深くて、すっと心の中に入ってくるんです。
−−今回の舞台をどんな人に見てもらいたいですか?
北川:もちろんみなさんに見て頂きたいです。すごく人生に一筋の光が見えてくるようなドラマ。心に悩みを持つ人にもぜひ。皆さんの心に響く、心温まるドラマになっていると思います。
(取材・文:名鹿祥史)
テトラクロマット第3回公演舞台「風は垂てに吹く」は8月18日(木)から23日(火)まで吉祥寺シアターで上演。
脚本:坂口理子
演出:福島敏郎