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全国ツアー直前 “平成の語り部”稲川淳二インタビュー

 この人の名前を聞くと、夏の到来を実感する。新作DVD「稲川淳二の怪怨夜話」(リバプール)をリリースした“平成の語り部”稲川淳二(60)がその人。夏の風物詩「稲川怪談」全国ツアーを前に、今の心境を聞いた。

 今年も“稲川夜話”のDVDが全国のコンビニに並ぶ季節が到来した。
 「夏といえば私と怪談…そう言われるのはうれしいですねぇ。怪談って日本人の心の片隅に、そっと生き続けているものなんです。古い町の路地裏にある駄菓子屋のように。前にロケで吉野山の頂上へ行ったとき、鉄塔の上から年配の作業員に“あんたのDVDぜんぶ持ってるよ”って声をかけられたことがありまして。やっててよかったなぁって思いましたね」
 毎年恒例の全国ツアーも7月17日から始まる。

 「スタッフも行き先も昨年と同じ。でも、今年のツアーは昨年の36倍怖いですよ。すぐ近くにあるのに気が付かない死角を意外なアングルから突いたような、エーッと驚くようなサイコっぽい感じのお話を用意してます。最初は笑えるのに、だんだんヤーな感じになってきて、最後に笑えなくなる。神経をヤラレる感じでね。その一方で、昔風のベーシックな怪談もあります」
 テレビやラジオで怪談話を披露していた若いころは、まだ生々しい“人間”だった。しかし還暦を過ぎた今では、本人自身が怪談の世界に近づいているようだと語る。
 「食欲、性欲、名誉欲…みーんななくなっちゃった。油ッ気が抜けたというかね。どっちかというとアチラの世界の人たちとお近づきになったような(笑)。霊界なんて昔はお呼びじゃなかったのに、今じゃ距離が近まった感じがします。なにより死が怖くなくなった。昔は怖かった場所でも最近じゃ怖くなくなりましたし。調査に行っても以前なら“何で来たんだ?”って言われたけど、最近では“やっぱり来たのか”って言われるようになって。たぶん、私が自然に帰ってるんでしょうかね? 70歳になったら、もっと楽しく怪談話ができることでしょう(笑)」

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