そこは雑居ビルの一室を借りている某進学塾であり、その日、除霊の儀式が行なわれるのだという。
テレビや書籍でそのような場面が紹介されることはままあるが、実際に民間の企業が除霊を依頼することは珍しいらしい。
当日、除霊に訪れた住職から訊いた話によると、土地や井戸などに対して屋外での儀式を依頼されることはあるらしいが、雑居ビルの一室での除霊は初めてということだった。
私はまず、その進学塾に訪れる前に、現場でどのような現象が起きているのか、どのような経緯で除霊をすることになったのかを取材した。
訊いたところによると、その進学塾は現地以外の場所にも多数の教室を持っているのだが、その雑居ビルに入っている進学塾の講師だけ、勤務が長続きしないのだという。
このようなことはそれほど珍しくもなく、どこにでもある話である。
しかし進学塾側としては多数の生徒を抱えており、講師が次々と辞めてしまうのは、時間割の都合上も、非常に困ることであるらしい。
そのために、スタッフが辞めてしまう原因を究明しようとしたところ『霊現象』にいきついたというのである。
夜遅く、事務所で残業をしていると、後ろを人が通る。振り返ると誰もいない。
そのようなことは講師陣の多くが体験している。辞めてしまった講師たちはもっと凄い体験をしているのかもしれないが、それを彼らの口から訊くことはできなかったという。
また、生徒が講師に向かって「そこに立っている人は誰?」と訊いてくることがある。
講師には『そこ』にいる人物は見えない。
何人かの違う生徒が、違う時間に、同じ場所を指して「そこに立っている人」と言う。
生徒の雰囲気からは、口裏を合わせていたずらをしているようには思えない雰囲気がある。
進学塾というのは、評判が非常に大事である。おかしな噂が立ち、生徒が減るようなことがあっては困る。
そのような背景からも、このたび、思い切って除霊を依頼することにしたのだという。
(「実話怪談記者」へみ 山口敏太郎事務所)
参照 山口敏太郎公式ブログ「妖怪王」
http://blog.goo.ne.jp/youkaiou/