それによると、グラベリー・フォード南の山から、人間がそのまま石になってしまったかのような奇妙な化石が発見されたというもので、地中から座ったままの姿で出てきたというものだった。
左の親指は部分的に顎を支えており、右目は閉じられ、右手の指は大きく広げられており、今にも動き出しそうな様子だったと人々は語る。
この人物は昔、鉱山で働いていた男性であり、石灰の中に埋もれてしまったために化石になってしまったのではないか、とされた。
非常に珍しい化石が発見されたと言うことで、1か月と少しで実に多くの人々が見物に訪れたという。
だが、化石と言えば太古の生物の死骸が土に埋もれ、成分が変質していくものである。しかも、今回の化石は骨ではなく、肉の部分も含めて石化してしまったものなのだ。果たして、近年の人間が肉の部分を残したまま、化石になってしまうことなどあり得るのだろうか。
実は、この記事は全くの創作であった。地元の新聞記者がスクープと、鉱山労働に関する皮肉と風刺を込めて作製したものだったのだが、風刺の部分は受け取ってもらえず、非常に珍しい化石が見つかったという点のみが大きく報道され、最終的には国を超えて世界中の新聞に掲載され、紹介される事態となってしまったのである。
文:和田大輔 取材:山口敏太郎事務所