出演者は、井之脇海が宇宙人に翻弄される少年、谷村美月がその姉を演じたが、怪優・嶋田久作が扮した、宇宙人一家の父親が見せるコミカルな演技に大きな注目が集まった。嶋田久作というと、どうしても『帝都物語』の敵役・加藤保憲のイメージが強いが、今回ばかりは見事に喜劇を演じている。
宇宙人一家の構成は、父親宇宙人が嶋田久作、母親宇宙人が原千晶、息子の宇宙人が馬場徹であったが、この一家が引き起こすドタバタが楽しいのだ。仕事で嫌なことがあると、父親宇宙人はやたらに牛を殺し、結果的に毎晩のように夕食がモツ鍋になってしまう。また宇宙人であるがゆえ、一家揃って睡眠という行為が理解できない、なんてシーンもある。まさに日本版『オースティン・パワーズ』とでもいうべき、王道の“お馬鹿コメディ”なのである。
「日本で本格的に“お馬鹿コメディ”が根付くターニングポイントになる作品ですね。家族で安心して見られる作品であり、“視聴者から笑われる”宇宙人番組から、“視聴者を笑わせる”宇宙人番組への進化を感じる作品ではないでしょうか」(ホラー作家・山口敏太郎氏)
この撮影現場に、奇妙な人物が訪問したことがあるという。このドラマの収録は、東京・恵比寿にある実際の一軒家を借り切って行われたが、この民家に怪しい男が出現したのだ。
男は作業着を着込み、いきなりその一軒家の玄関にやって来た。近隣の方がクレームを言いに来たのだと思い、その時手が空いていた美術スタッフとスタイリストの女性が対応した。
その男性は、
「すみません、遅くなって! もっと早めにご連絡をしなければならなかったのに、本当に申し訳ございません」
と告げると、家に上がろうとする。
「今は撮影中なんで、まずいです」
と、スタッフたちが懸命に止めると、
「え? 今日じゃないの? あれ? 間違えました! すみません」
と妙な回答をし、立ち去り際にニヤリと笑うと、不気味な言葉を吐いた。
「いや〜ちゃんと確認すればよかった…。また来るのは来年? いや、何十年か先になるかもしれませんね。では、失礼します」
実はその日に、第9話目のUFOを呼ぶシーンが収録されていたのだ。この不気味な男の話を聞いたスタッフは、本当に宇宙人が訪問したのではないかと囁き合った。
ちなみに、UFOや宇宙人の目撃者や研究家のもとには、MIB(メン・イン・ブラック)と呼ばれる男が訪問し、脅迫すると噂されている。ひょっとすると、宇宙人を扱った“お馬鹿コメディ”に、宇宙人も参加したかったのであろうか。不思議だが、どこか笑えるエピソードである。
(和田大輔 山口敏太郎事務所)