京都府の鴨川市で全長150cm以上と思われる巨大オオサンショウウオが河川敷を這う姿が撮影されたのである。その想像以上の巨大さから投稿者は思わず「もののけ」とつぶやき、ネットでは大きな話題になっている。
さて、今回撮影されたオオサンショウウオのように川の中には不思議な生物がたくさん住んでいると言われている。
右の写真は山口敏太郎事務所の作家・脚本家の中沢健氏が2010年、千葉県の松戸市内で撮影した謎の水生怪物「マツドドン」を撮らえたとされる写真である。
深い緑の草木の間に生物の背中らしき物体が浮かんでいる。全身は緑または黒色で、まさに小型の怪獣を思わせる容姿である。
マツドドンの伝説は1972年に松戸市付近の江戸川で未確認生物が目撃されたことがきっかけではじまった。マツドドンのネーミングは実に単純で「松戸に現れトドに似ているからマツドドン」。命名者は松戸市役所の名物部所「すぐやる課」の職員氏である。
さて、このマツドドンであるが目撃者によると頭が丸く、ヌメっとした体を持ち、ヒゲと二本の牙が生えているという可愛らしい姿をしているという。
特徴はアザラシに酷似している、というかアザラシそのものとの説もあるが、マスクラットやヌートリアの誤認という説もある。もっとも当時、マツドドンは目撃談だけで肝心の写真は撮られておらず「タマちゃん騒動」が話題になる30年も前、日本の川にアザラシが生息するなど当時の日本人は思いもしなかったことだろう。
ちなみに「マツドドン=アザラシ説」はかなり早くから囁かれていた推測である。毎日新聞1974年5月29日の記事によると、羽田空港のわきで推定7〜8歳程度のアザラシが現れたという事件がニュースになっている。記事では「1972年に騒がれたマツドドンの正体か?」とも言及されており、早くから「マツドドン=アザラシ説」の推測が研究者の間で存在していた証拠である。
また、2か月後の7月2日の毎日新聞では今度は愛知県に「イノシシのような怪物が泳いでいる」というニュースも報じられており(翌日7月3日、アザラシであることが判明)、1974年は「アザラシの当たり年」だったと言えるだろう。
ちなみに、アザラシは江戸時代の愛知県にも来日(?)していたようで、こちらは完全に「妖怪」として描かれている絵が現存する(ご丁寧に体重や身長までバッチリ調べているのが笑える)。
このようにマツドドンはすでに正体がほぼ確定してしまった存在だけに「昭和の遺産」としての側面が強いが、中沢氏が改めてその姿を撮影、公表したことでふたたびスポットライトが当てられつつある。
中沢氏は自身の撮影したマツドドンに若干懐疑的な目線(タイヤやゴミの見間違いだったかも? とも語っている)を持ちつつも「私が松戸に調査に行った際には、現地の若者のほとんどがマツドドンの存在すら知らなかった! 松戸市市役所にはもっともっと、マツドドンを愛してもらいたかった!」
と語っており、再度の調査、松戸市をあげてのPRを行うべきとも訴えている。
あなたも松戸市へ「マツドドン」を探しに行ってはいかがだろうか。
写真:中沢健
文:穂積昭雪(山口敏太郎事務所)