なにかと忙しくなるこの時期。寒くなって風邪も引きやすくなるので、たくさん食べて健康的な生活をするのは当然ですが、実は注意して欲しい症状があるのです。それが食中毒。
一般的に食中毒というと夏のイメージがありますが、むしろ秋から冬にかけて、気をつけなければいけない症状でもあります。
今回は、これからの季節の食中毒の危険性や対策について、医師の小田切ヨシカズ先生にお聞きしました。
■食中毒の原因と種類
「摂取した食べものにより、腹痛や発熱、下痢や嘔吐などの症状が起きてしまうのが食中毒です。食中毒はその原因によって、いくつかの種類に分けられます。
まず、細菌性食中毒は、サルモネラ菌、腸内ビブリオなどの原因菌によって引き起こされるもの。食品自体がこれらの細菌に感染していて、それを摂取したときに発症します。食中毒の多くはこのタイプで、全体の7割以上を占めています。
ウイルス性食中毒は、ノロウイルスなどに感染した食品が原因となって発症するもの。他にも、毒キノコやフグといった自然生物が原因となるもの。近年は減ってきてはいますが、寄生虫による食中毒などもあります」
■なぜ寒い時期に食中毒が増えるのか?
「暑い時期と寒い時期とでは、食中毒の種類に違いがあります。気温も湿度も高い環境で増えてくるのが、細菌性食中毒です。細菌がもっとも繁殖しやすい温度が35〜40℃。まさに夏場です。
これに対して、秋冬に増えてくるのがウイルス性食中毒。気温が下がるにつれ細菌の増殖は抑制されますが、ウイルスが猛威を振るい始めます。とはいえ、ウイルスは食物内で増殖することはありません。ただ、気温の低下により体温が下がり抵抗力が落ちたりすることで、体内で増殖し、食中毒を発症してしまうのです」
■食中毒への対策
「食中毒対策に三原則というものがあります。まず『つけない』。細菌やウイルスを付着させないよう、周辺を清潔に保つこと。食材や食器、手などもしっかり洗いましょう。
次に『増やさない』。細菌は高温多湿の環境で増殖します。ですから食材は、冷却して保存することを心がけましょう。ただ、ウイルスは食品内では増えないのでこの対策は当てはまりません。
最後に、『やっつける』。食材はしっかり加熱して調理すること。細菌は75℃で1分以上加熱すると死滅します。ノロウイルスの場合は、85℃で1分以上の加熱が必要になります。また、ウイルスの場合は嘔吐物などによる飛沫感染や、わずかな接触においても感染する恐れがあるので『ひろげない』ことも重要です」
高齢者や乳幼児がノロウイルスに感染してしまうと、症状が長引いたり重症化することがあるので、特に注意が必要です。この時期に美味しいお鍋なども、あんまりがっつきすぎず、よく火を通してから食べたほうがいいですね。
【取材協力】小田切ヨシカズ
湘南育ちのサーファー医師。ワークライフバランス重視の36歳。現在、横浜の内科クリニックに勤務中。