今回は、横浜の内科クリニックに勤務している小田切ヨシカズ医師に、涙の作用や健康効果についてお聞きしました。
■涙の種類とメカニズム
「涙には、目を乾燥させないよう保護するために出る“基礎分泌”と、目にゴミが入ったり辛いものを食べたりしたときに出る“刺激性分泌”。感情の昂ぶりによって溢れてくる“情動性分泌”があります。
情動性分泌のメカニズムとしては、目や耳から入ってきた情報が大脳辺縁系にある扁桃体で“快”と“不快”なものに分けられます。扁桃体は視床下部と連携していて、そこから伸びる自律神経に作用し、涙腺が刺激されて涙が出ます」
■涙に味の違いがある!
「嬉しさや喜びといった“快”の情動は、自律神経系の副交感神経を優位に働かせ、悔しさや怒りといった“不快”な情動は、交感神経を優位に働かせます。このため、2つの涙には成分に若干の違いが出ます。
悔しさや怒りによる涙にはナトリウムが多く含まれ、ややしょっぱく感じるのに対し、嬉しいときに流す涙はやや水っぽく感じます」
■涙がストレスの軽減に!
「人間はストレスを感じると、副腎皮質から分泌される『コルチゾール』というホルモンの量が増加します。血糖値や血圧を安定させるのに必要なホルモンですが、分泌量が増加してしまうと、高血圧や糖尿病、脳への悪影響が懸念されます。
しかし、このコルチゾールは、涙とともに体外へと流出することが確認されています。するとストレスの軽減に繋がり、懸念される弊害も抑制されます。一時期“涙活”というのが流行りましたが、こうした涙の効果を狙ったものです」
■歳を取ると涙もろくなるワケ
「歳とともに涙もろくなるとよく言われますが、そこにはいくつか説があります。まず、単に老化により、涙を排出するための器官が衰え、制御できなくなってしまうため。基礎分泌の時点で涙が溢れてしまうことも。
また、大脳の前頭葉における機能が低下することで、感情のコントロールが効かなくなるという説。もしくは、多くの経験を積んできたため、自分と重ね合わせる共感能力の発達によるものという説もあります」
最近では、パソコンやスマホなどの普及により、ブルーライトによる目への悪影響も取り沙汰されています。しっかりと涙を流して、目を乾燥から守りましょう。ストレス軽減によるアンチエイジング効果も見逃せませんね。
【取材協力】小田切ヨシカズ
湘南育ちのサーファー医師。ワークライフバランス重視の36歳。現在、横浜の内科クリニックに勤務中。