「すべてがうまくいきすぎた」高橋成師がそう振り返った通り、アドマイヤムーン、ダイワメジャー以下、有力馬の多くが4コーナーで大きな不利を被った。しかし、もしアクシデントがなく、がっぷり四つの競馬でも、結果は同じだっただろう。それ思わせるだけの強さと迫力だった。
もともとがタフな馬。しかも叩き良化型。レースでのダメージもほとんどなかっただけに、「栗東に戻ってからも涼しい顔だった」と、この中間は順調そのものだ。
14日の1週前追い切りは栗東坂路。800mを53秒8といつものド迫力調教とはひと味違ったが、これも計算通りだった。
「中3週の競馬だからそれほど強いケイコは必要なかった。確かにテンは遅くなったけど、終いまでしっかりした脚取りだった。最終追い切りで武豊君に乗ってもらえれば、それできっちり仕上がる」とトレーナーはうなずいた。
天皇賞前は馬インフルエンザ騒動に巻き込まれ、サムソン自身も陽性反応が出た。予定していたフランス凱旋門賞遠征も断念。文句なしの調整過程で、今回はそのうっぷんを晴らす舞台になる。
強敵はディラントーマスだ。前走のBCターフは不良馬場のため5着に敗れたが、今年はキングジョージ6世&QエリザベスSと凱旋門賞の欧州古馬2大レースを快勝している。欧州、いや世界最強の芝馬といっていい。
だが、高橋成師に気後れはまったくない。「本当ならウチの馬も凱旋門賞に出走していたはず。来年に向けても、ここでディラントーマスあたりにコロッと負けている場合やないやろ。楽しみにしているよ」
ダービーを制した思い出の東京2400m。絶好の仕上がり、頼りになる鞍上・武豊、そして圧倒的に有利な地の利。目指すは世界最強の座、サムソンが一気に駆け上がる。