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キャバ嬢が生まれる瞬間(7)〜母親の背中を見てキャバ嬢を志した女〜

 水川麻奈(仮名・18歳)

 高校を卒業したらキャバクラ嬢になりたいってずっと思ってた。学生時代、進路相談の先生にそれを告げるとやっぱり反対。それでも諦めきれない自分がいた。なぜそこまで水商売への憧れが強いのかというと、母親の影響なんだよね。私が3歳の時に両親は離婚、それからは女手一つで育ててくれた母。今は小さいお店で働いているけれど、昔の母は新橋のお店でナンバー1だったらしい。とにかく母みたいになりたいってずっと思ってた。

 私は母が大好きだったけど、夜の世界で働いていることに親戚達の目はとても厳しかった。私が中学の時も、少し帰る時間が遅くなっただけで「おまえがキャバクラなんてやっているから娘がグレるんだ!」ってたまたま家に来ていたおじさんが母を罵倒してたのをよく憶えてる。それから私は「母親があんなだから」とは絶対言われたくなくて、不良とはつるまなかったし、勉強もがんばるようになった。親戚から何を言われても顔色ひとつ変えなかった母のことを、誰よりも尊敬していたから。でも一度、いつものように親戚が母を罵倒して帰っていった夜、「ごめんね…、普通のお母さんになれなくて」って涙を流しながら抱きしめられたことがある。母が泣いているのを見たのはあの日だけだった。

 そんな母を見て育った私はついにこの春から、キャバクラで働くことになった。初めて体験入店した時、照明がキラキラと輝いていて、まるで別世界に飛び込んだような気分から、体が震えたのを憶えてる。でも現実はとても厳しいものだった。ノルマの達成や、客から心無い言葉を浴びせられ、胃は荒れる日々。給料が入ってきても美容院や化粧品に消えていく。さらに営業時間外の客へのメールや、お店の中の派閥も面倒。キャバクラ嬢という仕事がこんなに大変だったとは…。それに生活リズムや金銭感覚も少しずつ狂ってきて、何人かの友達とは疎遠になってしまった。

 でもいざ働いてみて一番に思ったのは、こういうリスクを背負いながらも、お母さんはがんばってきたんだなぁということ。キャバクラは決して華やかなだけの世界じゃないし、今後私がこの厳しい世界でやっていけるかもわからない。でも母の大変さがわかっただけでも、働いてよかったって思ってる。

(取材・構成/篠田エレナ)

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