昨今、電子申告(e-Tax)が注目され、国税庁もこの制度のお得さ、利便性を強調しています。確かに税務署に出向いたり、郵送したりする必要がなく、自宅のパソコン上で申告できるのですから、便利であることは間違いないようです。職員の手を煩わせることがないこのシステムを、国税庁が盛んにPRするのも当然でしょう。
国税庁がうたう電子申告のメリットは、1.最高5000円の税額控除、2.添付書類提出の省略、3.還付がスピーディー、4.自宅やオフィスでできる、5.24時間利用可能の5点です。やはり、目がいくのが「最高5000円の税額控除」です。ここでは、電子申告が本当にお得なのかを検証してみたいと思います。
まず、電子申告はパソコンさえあれば、誰でもできるわけではないのです。住民基本台帳カード(以下、住基カード)と、それを読み取るためのICカードリーダライタという機械が必要です。
住基カードというのは、あまり聞き慣れないのですが、住民票を置く役所が発行する身分証明書です。これは役所に出向かなければ作れませんし、おおむね500円の手数料がかかります(自治体により無料の場合もあるようです)。また、このカードは電子証明書としての有効期限は3年であるため、電子申告を継続するためには、3年ごとに手数料を払って更新しなければなりません。
次にICカードリーダライタですが、これはネット販売や電器量販店等で購入しなければなりません。最安値でも2300円ほどですから、住基カードの手数料を加えると、電子申告のために最低でも2800円ほどの先行投資が必要です。
そこで、「最高5000円の税額控除」ですが、この特典は毎年受けられるわけではありません。平成19年〜22年分の間で1回のみです。つまり、21年分以前に、この特典を受けた人は、もう使えません。もちろん、この控除を使わなくても、支払うべき所得税がマイナスになる人は、これがメリットになることはありません。
何か電子申告だとお得なようなイメージがありますが、一概にそうともいえません。ケースバイケースで、その人の申告内容によります。あくまでも、その人の考え方ですが、先行投資が必要であることをお忘れなく。ただ、損得ではなく、利便性を追及する人には良いシステムでしょう。
(ジャーナリスト/落合一郎)