『命売ります』は、“文豪”三島由紀夫の怪作のひとつ。中村演じる主人公の山田羽仁男は、広告代理店に勤務して、経歴や収入の観点で見れば不自由のない生活を送っていた。しかし、見栄や出世のために生きていることに疲れ果て、自殺を決意。しかし死ねなかった。そこで、命を売るビジネスをスタートさせた。山田には奇々怪々な依頼が次々と舞い込んでくる。死を切望しながらも、死ねない現実の繰り返し。死にたい男が、生きたい人間の欲求に触れることを通して「生」を再考する物語だ。
あっぱれなのは、初回から出し惜しみなく、お色気を打ち出していった点だ。
初回の依頼は、実業家の岸(田中泯)からだった。自分の若き妻(橋本マナミ)と山田にオトナの関係になってもらい、裏社会のボス・李正道(故・大杉漣さん)に見つかって、殺されてほしいというものだ。ちなみに、放映時はすでに大杉さんは他界している。大杉さんは「愛人で裏社会のボス」という、役者生命を振り返る上で欠かせない役柄で“復活”していたわけだ。
「国民の愛人」として名高い橋本は、この回で脱いだ。ベッドの上で妖艶な表情を見せる橋本の上に、中村が覆いかぶさった。残念ながら裸体はお預け。しかし、橋本の「感じる」表情は、想像力をかきたてるには十分。橋本にうってつけの配役で、初回からエンジン全開だった。
続く2話目は、フェチ的なエロティシズムが爆発した。女優で作家でもある酒井若菜が、父に捨てられたことがトラウマになり、吸血病になってしまった母・八重子を演じた。布団の上に寝た中村の皮膚にナイフを入れて、出血させ、酒井はその鮮血を「チュー」と音を立ててすすった。女性が能動的になる情交よりも、エロい。時には腕。時には胴体。さまざまなシチュエーションで、酒井はひたすら男の皮膚に唇を当てた。欲情を抑えきれず、酒井の方から唇にキスして、最後は自死を遂げる残酷なエンディングを迎えた。
セックスシーン、吸血&キスシーンと過激なシーンが続くと、3話目ではより過激さが求められる。制作サイドはそれに応えた。この回では、看護師に扮(ふん)した壇蜜が中村にキスをした。微妙に左右に角度を変え、唇の重ね方にも変化を付けた。さすがは壇蜜である。
ややガッカリなのは、ここ数週間、官能シーンが減った点だ。期待に胸と股間を膨らませていた殿方は、ガッカリと言ったところか。しかし、作品としての精度は抜群だ。ナレーションは美輪明宏。おぞましさが増す要因は、ここにもある。