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名言の謎

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画像はイメージです。

 ソーシャルネットなどでは著名人の肖像画などに興味深いエピソードや名言をあしらった画像がひんぱんに流されているものの、それらのなかには歴史的事実とは言いがたい、出所不明の言葉やエピソードも混じっている。

 たとえば、歴史小説に描かれた創作があたかも歴史的事実であるかのように受け止められ、そのまま俗説として定着したものもある。そのためか、最近では根拠が曖昧な名言や歴史人物のエピソードを積極的に検証するマニアも増えたが、時に「実はデタラメ」だったかのように攻撃的な見出し語で衆目を集めるなど、ネット集客や広告誘導などの材料となることもあった。

 よく知られている印象的な言葉やエピソードほど注目を集めやすいし、意外性も大きいため検証されやすいのだが、語り継がれてきた名言や逸話を覆すような新事実が簡単に見つかるはずもなく、もちろん逆転は難しい。ところが、教科書にも登場する「織田がつき羽柴がこねし天下餅すわりしままに食うは徳川」との落首(世相を風刺した狂歌を匿名で公開したもの)について、出典が極めて曖昧との指摘がなされたのだ。

 もし指摘が事実であれば、大変な歴史スクープとなる。だが、定説とは異なる出典の存在を示すならともかく、存在しないことを示すというのは悪魔の証明であり、簡単には立証できないのだ。

 まず、問題の「織田がつき羽柴がこねし天下餅すわりしままに食うは徳川」について、通説を再確認しよう。

 これは江戸末期(1849年)に出版された歌川芳虎の浮世絵「道外武者御代の若餅」にまつわる落首とされており、浮世絵には餅をつく桔梗紋(織田信長の家紋)の武者と餅をのす猿顔の武者(豊臣秀吉)が描かれ、そして竜頭の兜を被って座したまま餅を食する武者(神君、つまり家康)が登場している。そのため、家康が労せずおいしいところをもっていったとの寓意が隠されているとされ、まもなく浮世絵は発禁になり、版元ともども歌川芳虎も処罰されたと伝わっている。

 ただし、狂歌そのものは現存していないのだ。

(続く)

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