長瀬智也と岡田准一のジャニーズコンビが、落語家の泣き笑い修行を演じたのが「タイガー&ドラゴン」。ふたりに加えて脇を固めたのが、西田敏行と笑福亭鶴瓶。脚本が宮藤官九郎とあってはおもしろくないわけがなかった。映画「しゃべれどもしゃべれども」の主演は、これまたジャニーズの国文太一。その名演技には映画賞が贈られた。
そして、「ちりとてちん」。おっちょこちょいの女流落語家役に扮した貫地谷しほりは、その後女優としての地位を固めることになる。師匠役、渡哲也の噺っぷりが援護射撃になったのを忘れてはいけない。
…長ーいマクラを振ってしまったが、紹介するのは落語入門書、ちったぁ知ってる人向け、通のおさらい用と取りそろえてみた。
ズバリ、「落語入門」(渡邉寧久監修、成美堂出版、税込み1365円)は、まずは落語の歴史を年表で紹介する、受験参考書っぽい作りが悪くない。明治時代の隆盛ぶりに、協会の分裂騒動など離合集散を明かしているのは、落語検定ができたら受けたい人のため? 名人候補のひとりに上げられる立川志の輔が落語の魅力を語り、名作解説と昭和・平成の名人紹介と続く。入門書とあるが、正座してかからないといけない本格の作り。その流れか、付録のCDは志ん生の2話。「火焔太鼓」「文七元結」ときては、膝をただして拝聴だ。
「落語のすべて」(大友浩監修、西東社、1785円)のサブタイトルは“もう一度学びたい”。寄席の楽しみ方を写真で紹介するなど、初心者にはこっちが向きか。圧巻は70人を超える名人上手のエピソードを交えた解説。演芸研究家の監修者ならではのこだわりか。付録のDVD。柳家権太郎「くしゃみ講釈」と桃月庵白酒「転宅」の2話収録だ。
3冊目のトリは、「落語への招待」(別冊歴史読本、新人物往来社、1890円)。こちらの副題は“「入門者」から「通」までたっぷり楽しめる”と大風呂敷を広げている。売りは志ん生の巻頭特別エッセー「お化け長屋は楽しき哉」。発掘原稿で、希代の名人の貧乏自慢がまんま落語的。知ってた人も初めての人も、そのアッケラカンっぷりに脱帽するしかない。三平、談志に志ん朝らの粋が語られ、小沢昭一の対談もある。付録のCDは古今亭駿菊の「湯屋番」と「宗の瀧」。
雑誌が特集を組み、テレビCMでおなじみ、♪ディアゴスティーニから、落語ものが出るなど落語ブームはまだ当分、続きそうだ。海苔をくれ…じゃなかった、乗り遅れないように、ね。