中国人にとっては定番の昆明、成都、重慶あたりも、日本では「お、通だね〜」と言われそうだ。ちなみに昆明というのはベトナムに近い雲南省の都市で、中国の人に「あなたの国で一番綺麗なところは?」と聞くと、ここと答える人がかなり多い。
しかし今回紹介するのはもうマイナーどころの話ではない。山手線の「田端駅」が成都だとしたら、都電荒川線の「町屋駅前駅」くらいの存在感か。(最寄りが町屋駅前駅の方たちすみません)
広東省の西端。広西チワン族自治区との境目にぽつんとある、2本のストリートの間に細い路地がちょろちょろっと伸びているだけの小さな町。バス停の漢字を見てみると、「青平」と記されており、近くには青平中学校があったのでおそらくそういう地名なのだろう。
5分も歩けば町の全体像が掴めてしまうくらいこじんまりとしているが、こんなところにも夜になると活気づいてくる場所がある。ただナイトというよりはイブニング。晩御飯の時間になると町中の人々が中心部にある青平市場に集まってくる。生肉はヒモにぶら下げられ、野菜は地面に敷いたゴザの上で売られている。とりわけ人気なのはお惣菜だ。色とりどりの炒め物や煮物から、ニワトリの丸焼きまで種類は豊富。みな我が家のキッチンから大皿を持参し、いくつかの屋台を回りながらひとつのオードブルを作りあげていく。見ている分にはとても美味しそうなのだが、生肉の腐った匂いがキツすぎて正直全く食欲は沸かない。ただ、食べたら豚にされてしまいそうな、異世界の雰囲気漂う空間だった。
地図を見てみると、市場の反対側に1つスーパーマーケットがあった。試しに行ってみると意外と広く、コンビニ6個分くらいの面積はある。しかし、客は私を含めてたった3人。働いているおばちゃん達も本当は市場に行きたいのかな〜、なんて勝手なことを考えたりした。
ここからは昼の市場の様子を。ちょうど春節の時期だったため、そこらじゅうでニワトリや豚の悲鳴が響き渡り、町は完全なお祝いムードだった。実際に首が落とされる現場を目の当たりにすると残酷な光景として脳内にインプットされてしまうが、普段日本で食べている生き物たちよりもよっぽど愛のある殺され方をしているなと感じる。まあニワトリ側にとっては愛もクソもねよ! って感じだろうけれど。
ある屋台ではヤギの頭、胃、上半身、下半身、脚、が露骨に並べられ、頑張って組み立てたらもう一度立ち上がるんじゃないかとさえ思えてくる。その表情はこの上ないほど安らかなもので、神的なものまで感じさせる。何の変哲もない板切れが祭壇に変わり、その目を見つめているとどこか違う所へ吸い込まれてしまいそうだった。
國友俊介
【プロフィール】
國友俊介 (くにとも・しゅんすけ)
旅×格闘技、アジアを自転車で旅をしながら各地のジムを渡り歩いている。目標は世界遺産を見ることではなくあくまで強い男になること。日本では異性愛者でありながら新宿2丁目での勤務経験を持つ。他にも国内の様々なディープスポットに潜入している。
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