「夜の世界に入ったのは大学を卒業した22歳ぐらいの時。一人暮らしで就職も決まらず、生活費の問題も含めて焦っていたので、とりあえずキャバで働きはじめました」
最初は数か月で辞めるつもりだった麻紀だが、人と話すことが得意で、酒も大好きだった彼女は、そのままキャバクラを続け、指名も順調に増やしていった。
「それから、先の見えないままズルズルとキャバ嬢を続けてしまい、今に至ります。若いときはよかったんです。深夜に飲み続けても、そこまで疲れをそこまで引きずることも少なかったですし。でも気がつけば来年で30なんですよね」
キャバ嬢を引退する者の中には、結婚であったり、貯金していたお金で店を開いたりする嬢もいる。だが麻紀は入った分はそのまま使っていたため貯金もなく、結婚を約束するような相手もいなかった。やがて麻紀は夜の世界で働くことに限界を感じ始める。
「一時期より指名も随分と減って、このまま続けても未来はないのかなと感じてしまったんです。親にもこの仕事をしていることを黙っていたんですけど、東京を離れることを自分で決めた後、電話で打ち明けました」
親に反発し、大学進学のために上京した麻紀。ほとんど実家に帰っていなかったというが、すべてを打ち明けたことで、親は暖かく麻紀を受け入れてくれたのだという。彼女はすでに先月末にキャバクラを辞め、今月中に引越しをする予定だ。そして来年からは実家のある山形で新たな人生をスタートさせるという。
(文・佐々木栄蔵)