ヤマダの現在の筆頭株主は、エフィッシモ・キャピタル・マネージメントという旧・村上ファンド出身者が設立した投資会社。発行済み株式の17%弱を保有し「物言う株主」として不気味な存在感を増している。市場筋は「エフィッシモに対する防衛策としてソフトバンクにすり寄った。安定株主作りが最大の狙いだろう」と解説する。
ソフトバンクはヤマダの自社株5%を227億円で引き受ける。これに創業者の山田昇社長の保有分(9%=資産管理会社分を含む)をトータルすると14%で、ほぼ拮抗する。とはいえ、ソフトバンクの孫正義社長は「根っからの商売人」(関係者)。請われてヤマダ株を取得し、大金を投じる以上、より大きな見返りを期待しないわけがない。
「ヤマダ電機はソフトバンクだけでなく、ドコモやauなどの携帯電話も扱っている。孫社長がヤマダの店舗網をフル活用しようとすれば、ライバルを一斉に締め出す作戦を取るのは明らか。遠からずソフトバンクの軍門に下らないとも限りません」(大手証券役員)
これぞ野心家で知られる孫社長によるヤマダ電機の“機関店舗化”だが、問題は筆頭株主としてにらみを利かせるエフィッシモがこの事態を許すかどうか。何せ、転んでもタダでは起きないという点では、あの村上世彰氏譲りの荒業を駆使して標的企業を震え上がらせてきたエフィッシモの方が役者は上手。むしろ孫社長がヤマダ電機の応援団長にシャシャリ出たことで「相手にとって不足なし」とばかり、ファイティングポーズを取る可能性は十分ある。
「ダボハゼ路線を突き進んだ孫社長は意外にも脇が甘く、むしろヤマダ電機よりも攻略しやすいかも知れません。村上ファンドの残党は内心、『カモが2羽に増えた』とニンマリしているはずです」(市場関係者)
二兎作戦は吉か凶か。